内容紹介

海上自衛隊艦船のインド洋での給油活動は、その継続の是非が国会で問われたが、自衛隊が担っていたのは現代の戦争あるいは戦闘行動では生命線となるロジスティクスそのものである。旧日本軍の致命的な弱点は、このロジスティクスの軽視にあった。その悪しき伝統を継承してか、自衛隊でも、ロジスティクス軽視の体質は変わっていないことは、ロジスティクスの訳が依然として「兵站、後方」となっていることに現れている。ロジスティクスの正しい定義は「多くの人間と装備が関与する場合に、複雑な作戦を成功させるために必要とされる実際的な機構」(オックスフォード辞典)である。
 本書は激変するロジスティクスの最前線を膨大なデータをもとに描き出した。湾岸戦争当時、ぺルシャ湾に送られた8万個のコンテナは、現地で一度開封し、中身を確認してから封印して目的地に送っていた。12年後のイラク戦争では、各コンテナには電子タグが付けられ、開封しなくても内容物、発送地、目的地がわかるようになった。ロジスティクスを担うのは、なにも軍人だけではない。軍は、ロジスティクスのかなりの部分を民間に委託している。本書にはハリバートンなど民間請負会社の実態も詳細に描かれている。100点を超える写真資料を収録し、アフガン、イラクという新しい戦場での軍事行動をロジスティクスの観点から見事に分析している。