内容紹介
経営学の第一人者、マイケル・ポーター教授が医療界の矛盾を斬る!
医療改革の新しい指針を提示する話題の一冊。640頁に及ぶ大作!!
大金持ちは世界最高水準の治療を受けられても、国民の7人に1人は無保険者で、国全体では先進国中で最低と評価される米国の医療システム。日本では大野病院事件で医療崩壊や医師不足がクローズアップされたが、「地域に産婦人科医がいない!」事態は米国では20年前に起こっている。レーガン、ブッシュ親子、クリントンなどの歴代政権も医療改革を試みたが、ほとんど成功することなく終わっている。「株式会社の病院は、非営利病院に比べて、医療のレベルが低い上にコストは高い」という学者の分析リポートも報告されている。
著者は、アメリカの医療改革が失敗ばかりなのは、医療費をゼロサムゲームにしたまま市場の競争を持ち込んだのが主な原因だと指摘する。これが優れた医療を提供する医師や病院が評価されるシステムを作れず、コスト削減競争だけを促したため、必要な医療も受けられない患者が急増し混乱に拍車をかけた。
医療に競争はなじまないという印象を持っている人は多い。しかし著者は、多くの国民が必要な医療を受けられる社会としての公平性と、優れた医療を提供するために医療従事者が努力して切磋琢磨することは矛盾しないと考える。レベルの高い医療を患者に提供した医療従事者が正当に評価され、国民に適切な情報が伝わるポジティブサムゲームにやり方を改めれば、最もコストパフォーマンスの高い医療が実現できると考えている。
本書は、ハーバード・ビジネス・スクール(ハーバード大学経営大学院)教授で「経営戦略論」の世界的権威である著者らが米国の医療について書いたものであるが、わが国においても参考とすべき点は多く、活用されるべき内容に富んでいる。現状分析にとどまらず、ポジティブな競争を実現するために医師、コメディカル、病院、政府、保険会社などがなすべきことも提案している。医療改革の新しい指針となることを意図した画期的な提言の書である。
「競争戦略の泰斗、ポーター氏による医療政策のバイブル。米国の医療が失敗した理由を分析し、再生への道筋を示した本書は、医療ビジネスの真の在り方をわれわれに教えてくれる。医療・介護にかかわるビジネスマン、行政官、研究者、すべての方に読んでいただきたい」
-セコム最高顧問 飯田 亮氏
「本書は医療システムの基本構造と、そのあり方、具体的な設計方法に関する実践的かつ包括的な教科書である。ポーター教授の提言は、わが国でこそ有効に活用されると考えられる。いずれにしても混迷を深めるわが国の医療界に、本書は重要な指針を与えるであろう」(日本語版への推薦文より)
-東京大学大学院医学系研究科循環器内科教授 永井 良三氏