内容紹介
世界には数万人、もしくは10万人を超えるエコノミスト、経済学者がいるとして、今回の「100年に一度」「未曾有」の経済危機を「予測」できた人はいるのだろうか。そうした疑問に、英国の経済紙フィナンシャルタイムズは、2008年12月、見事に今回の危機を「予測」した経済学者として、ニューヨーク大学のノリエル・ルービニ(Nouriel Roubini)教授をただ1人挙げた。本書は、昨年7月に『投資銀行バブルの終焉』を刊行、同年9月のリーマン・ブラザーズ破綻を「予言」したと評判になった著者が、ウォール街で「ミスター破滅(Mr.Doom)」と呼ばれてきたイラン系ユダヤ人の学者がなぜ、危機を予測できたのかを追跡したノンフィクション。
ルービニ教授が「金融危機」を予想したのは2006年のIMF総会での講演に遡る。
「専門家による経済予想、特に景気後退の予測は当たらないものだ。私は予想の専門家ではないから、たぶんこの予想は当たるだろう」と切り出したルービニ教授は、「米国はこれから厳しいリセッションに陥る、皆が期待するようなソフトランディングはあり得ない」と「予言」した。
住宅市況の変調、原油価格、FRBの金融政策の3点を根拠とする予想である。
ルービニの分析は「直感」に根ざした部分も濃厚で、当然ながら、主流のエコノミストからは冷笑され、批判も多かった。だた、最近になって、主流派経済学者もルービニ予想に注意を払わざるを得なくなってきたようだ。今回の危機を機にぐんと世間の評価が上がったルービニ教授だが、今も毎日、自分のウェッブサイトで悲観的な予想を書き続けている。
米国経済の将来、経済学の役割などを再考させる1冊。