内容紹介
「アフリカのサバンナで始まった原始的な狩猟採集社会から、一八〇〇年ごろまで続いた定住農耕社会にいたるまで、ほとんどの人間社会の経済活動は、ひとつの単純な事実によって形成・支配されていた。その事実とは、長期的には出生者数と死亡者数が必ず等しくなっていたことである」(本書第二章「マルサス的経済の論理」から)マルクス『資本論』、スミス『国富論』、ダイヤモンド『銃・病原菌・鉄』に匹敵する、人類の「ビッグ・ヒストリー」を描いた本書は、膨大な歴史資料を分析して大胆な仮説を提示した気鋭の計量経済史家の問題作である。その問題意識は2つある。一つは技術進歩が人口の増加によって打ち消される「マルサスの罠」の時代がなぜ紀元前から1800年まで続いたのか、もう一つは英国が先頭を切った産業革命を期に、「マルサスの罠」を脱却して経済成長を果たした先進国と、サハラ以南のアフリカのように停滞したままの国が「分岐」したのか、である。
上巻は1800年以前の経済社会を豊富なデータをもとに再構成する。