内容紹介
「以上の議論は、少なくとも10万年間続いた変化に乏しいマルサス的経済が、近代的経済へ移行したのは、1760~1800年のあいだだったことを物語っている。人類史上ではほんの一瞬ともいえる短いあいだに、この二つの制度間の決定的断絶が生じたかのようにみえるが、このような見方は誤りである」(本書一二章「英国の産業革命」)日本や中国ではなく、なぜ英国で産業革命が先行したのか。人口の飛躍的な増大、米国などの原料生産国との貿易の活発化などが偶然重なったため、技術進歩のゆるやかな上昇が経済構造の突然の変化に見える、と著者は見る。
経済成長論の外因的成長論、複数均衡説、内因的成長論を検証しながら、文化的、遺伝的「要因」を明らかにしていく手捌きは、推理小説のような知的興奮を誘う。