内容紹介
われわれの知らない本当のアダム・スミススミスの性格のうち特に顕著だったのは、その心気症と孤独癖を除けば、社会のなかの最も貧しい階層に対する関心が強かったことである。『人口論』のマルサスを、「国の豊かさ」と「下層階級の幸福度」を混同していると非難したほどだ。
そうしたスミスは、「同感」と呼ぶものの作用が社会全体を導く基本的な原理だと考え、この原理を社会の支配と法に適用しようとして、生涯苦闘を続けた。
スコットランド啓蒙期に通じた著者バカンが、膨大な未刊行の手稿を読み込み、その生涯と二大主著の成り立ちの背景を魅力的に描ききる。絶好のスミスの入門書にして、密度の濃いコンパクトな評伝。
--堂目卓生・大阪大学大学院経済学研究科教授の解説を付す--