内容紹介

海外、特に新興国の工場運営で最も難しい分野は、現地の従業員とサプライヤーを戦力化することです。本書は、そのための多くのノウハウを盛り込んだ見える化手法「7M+R&D(なな エム プラス アール アンド ディー)アプローチ」の実務手引書です。

著者は、1965年にいすゞ自動車に入社以降、ほぼ一貫して生産技術畑を歩み、専務取締役(生産担当)を退任後は、旭テック社長兼CEOなども務めました。その間、日本に加え、欧州や米国、中国、韓国、アセアン加盟国、南アフリカ、トルコなどで経営者や指導者として工場の運営に実際に携わってきました。7M+R&Dアプローチはその経験を通じてつくり上げた新経営管理技術です。

多くの海外工場では、日本と同様に生産工程における管理項目を設定して改善活動が進められています。しかし、海外で工場を運営する場合、これでは不十分です。なぜなら、海外におけるものづくりは日本とは異なり、労使協調状態とはいえない従業員と、契約書に書いてないことは対象外とするサプライヤーを前提とする必要があるからです。

7M+R&Dアプローチでは、通常の管理項目に「労使協調力」や、「サプライヤーの品質管理」「サプライヤーの改善活動」を統制する能力など加えた32要素を、0~4の5段階で評価します。本書は、その評価のための具体的な基準と、評点を上げるための実践的な手法を紹介しています。さらに、この評点が高いと総資産利益率(ROA)も高いことが実際の調査によって統計的に確認されており、その結果も解説しています。現地の従業員・サプライヤーの戦力化、さらには工場全体の実力の向上に直接役立つ内容です。

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【推 薦】
東京大学経済学研究科 教授 / ものづくり経営研究センター(MMRC) センター長  藤本隆宏 氏

佐々木久臣氏が提案されている「7M+R&Dアプローチ」は、東京大学ものづくり経営研究センターの「ものづくり組織能力論」の実践版ともいえる、ものづくり経営力の簡明な分析・測定フレームワークである。
マーケティング、財務、マネジメントを含む点で、中小企業経営者による自社の現場診断ツールとしても優れている。さらに、グローバル化の進む大企業では、新興国と日本の拠点間で分業と連動が必須であるが、本書は内外両拠点の同時強化に有効である。体系性と実践性をバランスよくまとめた本書を、円高・不況・震災に対して「あきらめない経営」を続ける現場管理者と経営者の皆さんに強くお勧めする。
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