内容紹介
エリザベス・ヒューズが若年性糖尿病と診断されたのは1919年のことである。エリザベスは、アメリカで最も有名な弁護士で、後に国務長官を務めた政治家でもあるチャールズ・エヴァンズ・ヒューズの娘だった。当時、糖尿病という診断は死の宣告を意味していた。唯一の“治療法”だった飢餓療法を受けたエリザベスは体重が20kgに減って骨と皮になってしまった。ちょうどそのころ、遠く離れたカナダでは、フレデリック・バンティングとチャールズ・ベストの2人の若い研究者が、何とか動物の膵臓からインスリンを単離精製することに成功した。だが、このミラクル(奇跡)も、学問的な嫉妬、熾烈な事業化の競争にもみくちゃに翻弄されることになる。破壊的な病気との時間を争う闘いの中で、エリザベスは世界で最初にインスリン注射を受ける糖尿病患者の一人になった。一方で、インスリンの発見者たちとある製薬会社は世界中にインスリンを供給できるようにするために必死に奮闘していた。
これまで語られることがなかかった、インスリン発見をめぐる感動ノンフィクション。著者のT. クーパーとA. アインスバーグは、周到な調査と取材を重ねて、細部まで描き出した。