内容紹介

大規模なデータベースを伴うシステムの構築に失敗、あるいは小回りが利かないという限界を知る人を魅了するのが、ブリヂストンなどにおいて多くの実績を持つシステム構築の方法論「FOA(Flow Oriented Approach)」。ものづくり現場の情報把握と瞬時の判断、対応という既存システムの不得意な部分をFOAでカバーすることにより、製造業の経営と現場の連携を強化し、競争力を向上させる。その経営における意味から具体的方法までを初めて詳細に著した。

著者はブリヂストン在籍中にFOAを発案、発展させ、海外工場の素早い展開、生産品目のグローバル規模での調整などに役立てた経験を持つ。

多くのビッグデータは単純に蓄積した情報を、あとで分析して因果関係を見いだす。しかしFOAでは、現場で情報が発生した時点で、背景となる情報や関連情報を自動的に組み合わせて小さな固まりにしてから、企業内の各部門に伝える。最初から因果関係を示唆する情報が備わっているため、すぐ使えると同時にあとからの分析も格段に容易である。


【推薦・応援の言葉】

◆藤本隆宏氏(東京大学大学院 経済学研究科 教授)
 私はFOAを「回転寿司型のIT」と呼ぶ。現場から上がる新鮮なネタ(現場情報)を、客が食べやすいサイズ(「短冊」型のデータ)にして、それがコンベア(イントラネット)に乗って、お客(データを使う現場)の前を回る。お客は食べたい寿司(データ)を選び、自分のメニュー(問題解決策)を自分で作る。この仕組みを使うことで現場の問題解決能力は増進し、本社も現場情報を共有できる。FOAは、この現場や本社が「流れ」を共有する日本発のITとして有望と思う。

◆中西宏明氏(日立製作所 代表執行役 執行役社長)
 奥さんがブリヂストンのグローバルな生産改革を成し遂げる過程でFOAの基本コンセプトを完成させる途上では、私たち日立グループも何がしかのお手伝いをさせていただきましたので、基本的なことは承知していると自負していました。しかし、実際奥さんから直接、本書で詳細に述べられているレベルまで、徹底して現場のデータをリアルタイムで共有し、日々の操業に活用する仕組みを完成させたとのお話をお聞きした際には、驚くというより感銘を受けました。これは我が社の経営陣だけでなく、会社を実際動かしているメンバー全員に読ませたいと思いました。

◆新 誠一氏(電気通信大学 情報理工学研究科 教授)
 真に渇望されているのは、新たな時代を切り拓くイノベーション。それは、生情報をスタッフ一人ひとりが独自に解析することで生み出される。それぞれが持ち寄る、違った回答の数々。違っていてもよい。いや、違っているのが良い。その多様性の中にこそ、明日への道標が埋もれている。