内容紹介

しんしんと雪の降る2月。夜のとばりが下りると同時に、茅葺き屋根が光り輝く。ライトアップされた白川郷は神秘的な空気に包まれている。寒空の下、その美しさに上がる感嘆の声。だが近年、その声には耳慣れない言葉が数多く含まれるようになった--。

白川郷や上高地、乗鞍、立山などの起点となる岐阜県高山市。以前は案内板やパンフレットは日本語だけで、外国人観光客にとって観光しやすい町とは決して言えませんでした。ところが、現在では年間20万人を超える外国人観光客の誘致に成功しています。

その背景には、観光ホームページや道路標識の多言語化、100人超のボランティア通訳者など、きめ細かな対応と戦略がありました。冒頭の文章で描いているように、白川郷をはじめ、高山市の周辺が今以上に外国人観光客で賑わう日はそう遠くないでしょう。

もっとも、高山市は長年にわたる努力によって多くの外国人を呼び寄せるようになりましたが、対策が不十分なために、後れを取っている観光地は少なくありません。政府は、東京オリンピックが開催される2020年に訪日外国人旅行者数で2000万人の高みを目指すとしています。そのためには、より一層の対応が不可欠です。

本書は、外国人旅行者が見た日本の魅力、日本人が気づいていない観光資源について、地域再生を本業としている著者が分析し、まとめたものです。

日本人には当たり前で何気なく思える風景や地域資源でも、外国人観光客のフィルターを通して見れば極めてクールで、極めて日本的だと感じるものはいくらでもあります。身近であるがゆえに見落としている外国人旅行者獲得の糸口。その答えを、ぜひ本書にてご確認ください。

「日本が世界に訴えるべき観光資源、日本の価値、魅力とは何か? それは、意外にも私たち日本人が考えている範疇の外にあるのかもしれません」

著者が本書で述べている意味が、きっと分かると思います。