内容紹介
あなたの会社はどちらを目指す?「ホワイト企業」とは付加価値を高め続ける「個人」を育てる組織
本書で掲げる「ホワイト企業」とは、福利厚生が充実した人に優しい安定志向の企業ではありません。価値創造力を高めるため人材開発に力を入れ、イノベーション(本書では「技術革新」ではなく「価値創造」を指す)に結びつく実力重視の会社です。
20世紀の工業社会では、大量生産大量流通型産業が主流で、同質化とコスト競争の圧力がかかり、企業経営では効率向上と管理統制に力が注がれます。薄利多売モデルで経済合理性一辺倒の経営を追求すると、人件費を徹底して下げ、機械と同様に人の稼働率を上げるため、社員を使い潰す「ブラック企業」が生まれます。
21世紀の知識社会では、社会や顧客に高い価値を提供する価値創造型産業が主流になり、企業経営では持続的成長と価値創造が重んじられます。イノベーションは、一握りの天才イノベーターの所業でもなく、偶然生まれるわけでもありません。組織のイノベーション力を高めるカギは、価値創造を牽引する「クリエイティブ・キャピタル」(専門知識や技能を身につけ、顧客や社会にとって価値が高い仕事をする人)を組織内で増やし、価値創造に向けた「創造的学習」を促すことです。
「創造的学習」が価値創造のカギ
「創造的学習」とは、新しい価値の創造を目指す学習です。知識の記憶に傾倒する「受験勉強」や、生きる力や個性重視を抽象的に唱える「ゆとり教育」とは異なります。
創造的学習は、価値創造に向けた5つの学習活動から成ります。「テーマを見つける」、「没頭して楽しむ」、「実体験する」、「他者と交わる」、「教え合う」の5つです。5つの学習活動は、探求するテーマを定め、アイデアを生み、試行錯誤を通じてアイデアを仮説検証し、多様な他者と協働し、知恵を融合させるというイノベーションの活動サイクルと連動します。
働く個人の視点からも、価値創造に結びつく創造的学習法を身につけることは、80代まで働くことが今後予想される超高齢化社会の日本で、賢くなる人工知能や安い賃金の新興国の労働者と張り合い、就職後50年以上続くキャリアを生き抜く最大の武器です。
企業経営の4つの土台をつくり直す
価値創造型事業モデルに移り、組織内で創造的学習を促すには、工業社会で根づいた企業経営のあり方を変える必要があります。知識社会の経営では、業務効率と管理統制を重んじる従来のやり方は通じなくなります。社員の専門性と自律の促進がカギになり、人、職場、組織、文化の4つの経営の土台づくりが求められます。とくに、日本企業に根づいた7つの組織文化の壁を崩すため、文化づくりが大切です。