内容紹介
自動運転に取り組む自動車メーカー、部品メーカーの動向を詳説電動化に向けたパワートレーンの進化技術を解説
リコールや排ガス不正など社会を揺るがした事件を分析
自動車の販売台数1位を誇る中国経済が失速しています。この影響は自動車産業を直撃するでしょう。しばらく日本の自動車産業の好調を支えてきた円安も、今年はどうなるか不透明です。これまでのように「クルマを造り、売る」という商売を続けている限り、自動車産業に明るい見通しを描くことはできません。
業態を変えれば将来が見えてきます。電気自動車や自動運転車が普及すると、クルマは“所有するもの”から“利用するもの”に変わります。米グーグル社は、自動車をスマートフォンに並ぶ都市の情報を収集する重要な“端末”と位置付け、無人タクシーなど都市インフラ事業に乗り出します。スマートフォンの業界では広告などサービス事業が収益を上げ、ハードウエアの収益性は下がりました。自動車産業も、この事実に学ぶ必要があります。
本書は日経BP社が発行する経営・経済の総合誌「日経ビジネス」、自動車技術の総合誌「日経Automotive」、電子・情報・通信技術の総合誌「日経エレクトロニクス」の記事を再編集してまとめました。
第1章はクルマを変える大きな要素である自動運転を取り上げます。近い将来、自動運転のできの良さが自動車メーカーの競争力を左右するようになります。勝負を決めるのはクルマに装備した自動運転装置ではありません。装置と交信するクラウド上の人工知能であり、そこに集積した“経験値”です。
第2章は電動化です。COP21で地球温暖化防止のために協調していくことを各国が確かめ合いました。一方で原油価格が下がるという矛盾を抱えながら、燃費のよいクルマを求める力は衰えません。そのツールとして誰もが認めるのは電動化です。有望なのは燃料電池車なのか電気自動車なのかハイブリッド車なのかプラグインハイブリッド車なのか。論争が始まっているようですが、今は「どれも可能性がある。今から絞り込む必要はない」が正解でしょう。
第3章では自動車メーカーが絶対に避けなければならないスキャンダルを追います。不正の発覚、リコール、訴訟--。一つのミスで、長い時間を掛けて築いてきたブランドが価値を失います。フォルクスワーゲン社のディーゼルエンジン、タカタのエアバッグの事例から、「明日は我が身」にならないためのヒントを探ります。
第4章はどこで商売するかです。人口が減少する日本は市場としては期待できません。メキシコ、インドネシアなどに見配りを欠かせません。
第5章は話題のクルマ、会社を取り上げます。ここまで比較的長いスパンで将来を見通してきましたが、今年の売上を支えるのは今年売るクルマです。価格、利益率を上げてトヨタ自動車の収益の柱としての地位を固める「プリウス」がどんなクルマなのか。誰もが気になるところです。
3雑誌の視点はそれぞれ違い、3方向から自動車産業を見通すことができます。読者の皆様が自動車産業を正しく読むためのお役に立てば幸いです。