内容紹介

100年に1度の変革期を勝ち抜く「CASE+IMP」の最新動向を解説
CASE(コネクテッド、自動運転、共有、電動化)の核心に迫る
今こそ必要なIMP(内燃機関、素材、人)の強さを徹底分析

 自動車業界に流行語大賞があるとすれば、「CASE」は上位に入るでしょう。口にするだけで株価が上がるので「CASEバブルだ」という声もあるほどです。「CASE」はConnected(接続性)、Autonomous(自動運転)、Shared(共有)、Electric(電動化)の頭文字を並べたもので、ドイツDaimler社のDieter Zetsche社長が言い出した造語です。自動車の今後の方向を見通していますし、語呂もよい。たちまち流行語になりました。ただし、これだけでは大切なものが抜け落ちてしまいます。

 本書は、経営の専門誌「日経ビジネス」と自動車産業の専門誌「日経Automotive」の記事から、経営と技術のエッセンスを再構成したものです。ここ1年の動きを振り返ってまとめるとき、CASEだけでは説明し切れないことが明らかになりました。語呂は捨てて、「CASE+IMP」で全体を総括することにしました。

 IMPのIはInternal Combustion Engine(内燃機関)です。確かに電動化は正しい方向です。ただし多くの人に行き渡るにはまだ価格が高い。そこで内燃機関の開発に改めて注目が集まっています。熱効率を高める余地はまだあります。ハイブリッド車(HEV)にすれば効率はさらに上がります。効率が上がると、発電を含めた二酸化炭素(CO2)の排出量を電気自動車(EV)より少なくできる可能性があります。

 電力や燃料を節約するためにも、安全に曲がり、止まるためにも、車体が軽いことが必要です。電池の重いEVでは特に重要となります。軽くできるかどうかを左右する技術がMaterial(素材)です。価格の上昇を抑えながら軽くするためには、加工や接合まで含めて総合的に開発することが必要です。

 見落とされがちなのがPerson(人)です。CASEでは電池、センサーなど、クルマとはケタの違う量産規模を持つ部品の役割が増します。人工知能(AI)のように経験値がモノを言う世界では、“一人勝ち”が起こりやすくなります。その結果、メガサプライヤーによる寡占化が進み、自動車メーカーごとの差が付きにくくなります。そこに人の思いをぶつけることで、クルマに個性が出てくる。競争力はここで決まるのです。本書は、CASE時代のクルマの技術開発の進路を示す1冊となるはずです。

主な内容
【序章】どこまで行くのか
・2040年のクルマ徹底予測
・見えてきたクルマの未来

【第1章】Connected(接続性) ひとりでは生きられない
・商用車クライシス 危機を商機に変える
・トヨタ、2019年に電子基盤刷新 全車に暗号導入、取引先工場に
・サイバー攻撃に備える 侵入テストの活用がカギ

【第2章】Autonomous(自動運転) もう寝るので後はよろしく
・3次元地図 機械が「見る」新次元の地図
・GM無人運転車 打倒グーグル最右翼 19年量産
・自動ブレーキ 夜間の歩行者で競う …ほか

【第3章】Shared(共有) 移動ができればそれでいい
・トヨタはグーグルに追いつけるか MaaSの恐怖、ソフトバンク提携の意義
・グラブ ASEANの「アリババ」 …ほか

【第4章】Electric(電動化) 地球のためか中国のためか
・ダイソンが見たEV大競争
・トヨタの全固体電池 2030年へLIBと両輪で進化
・日産リーフの実力 実験・分解で見えた将来への道筋 …ほか

【第5章】ICE(内燃機関) 見切るのはまだ早い
・打倒トヨタハイブリッド ホンダ・VW逆転へ
・ディーゼル再興にのろし 常識を覆すマツダ、2020年規制達成へ
・ホンダがトヨタ猛追、新エンジン開発 最高熱効率40%超え …ほか

【第6章】Material(素材) 高くならない範囲で軽く
・部品を3~6割軽くする 樹脂化技術の最前線
・アルミを超えるCFRP クルマ軽量化の最有力へ
・ホンダ、新型車のボディーに採用 ホットスタンプ世界最大手の国産品 …ほか

【第7章】Person(人) 魅力を作るのはそれぞれの思い
・金井会長が語る マツダ 変革への挑戦
・チーフエンジニアの葛藤 開発責任者に聞く