内容紹介
■日本を熱狂させ、失望させたカリスマ--カルロス・ゴーンとは何者だったのか?
「水に落ちた犬は叩け」--。
2018年11月に突如逮捕されたカルロス・ゴーン氏。倒産寸前の日産自動車を再建し、カリスマ経営者として脚光を浴びた男は一夜にして転落した。
「公私混同」「強欲」「収奪」…。集中砲火を浴び、会社を私物化して日産に損害を与えたという「特別背任」などの罪に問われている。
今や、その存在が"全否定"されたかに見えるゴーン氏。その正体は何者だったのか。「日経ビジネス」が追い続けた20年の軌跡をたどると、知られざる姿が見えてくる。
例えば、1999年3月の日産とルノーの提携が事実上決まった会議では、「当日の会談の9割方は、ゴーン氏の報酬が議題だった」(当時の交渉担当者)。
ストックオプションを報酬に組み込まないと日本に行かないとしていた。
さらにゴーン氏は、日産入り前のフランスでの日経ビジネスの取材に対し、「日産の競争力を復活させることができたら、
ルノーと合併させて、『ルノー日産』にすることは容易になる」と発言。当初から合併を視野に入れていた。
■20年の支配の"功罪"を検証
--経営手腕は本物だったのか?
一方で、ゴーン氏が日産のV字回復で見せた手腕は実に鮮やかだった。
来日後すぐに多数の現場の管理職や社員と対話。生の声を吸い上げてプランを練り、有能な人材を引き上げ、組織を変えて、成果を生んだ。
本書では緊迫する当時の社内の様子、経営幹部の苦悩、部品メーカーとのせめぎ合い、そして日産がどう変化したかをエキサイティングに描く。
ゴーン流の再生手法は、今も色あせず、経営に関心を持つあらゆるビジネスパーソンにとり、示唆に富む。
■いかにして絶対権力を握ったのか?
--日仏連合を支配する"皇帝"になった理由
ゴーン氏が絶対権力者になったのは、実は必然ではなかった。1999年の提携時の契約では、「CEOとCFOは日産が決め、COOはルノーから出す」ことになっていた。
だが、COOになったゴーン氏の手腕に日本人の経営陣は感嘆。リストラやコスト削減で生じる反発の矢面に立つCEOにゴーン氏を就けた。
日産の日本人経営陣は自らの手で会社を改革するよりも、カリスマに「依存する」道を選んだことが、ゴーン氏が皇帝のように君臨する道を開いた。
■なぜ転落したのか?
--「アライアンスを不可逆的にする」発言の波紋
仏政府がルノーと日産の経営統合を迫る中、ゴーン氏は2018年春の日経ビジネスのインタビューで「アライアンスを取り消せない、不可逆的なものにする」と発言。
経営統合に関しては「日本政府や仏政府の合意が必要」としていたが、「統合圧力が高まっている」と日産関係者に受け取られかねないものだった。
こうした背景を知ることは、ゴーン氏逮捕を理解するうえで有益だ。
■「幻の日仏米連合」「不平等条約」…
--歴史から見えるゴーン氏の野望と実像
本書ではゴーン氏が狙った米ゼネラル・モーターズとの幻の資本業務提携や、日産とルノーの「不平等条約」の実態など、日経ビジネスが追い続けたゴーン氏と日仏連合の20年間の軌跡を克明に描く。
<目次>
第1章 混迷 カリスマの功罪
第2章 降臨 フランスから来た男
第3章 破壊 大リストラと系列消滅
第4章 再生 V字回復の光と影
第5章 栄光 飽くなき成長欲
第6章 君臨 世界制覇の野望
第7章 直撃 ゴーンショックからリーマンショックへ
第8章 中国 巨大市場に見出した活路
第9章 電撃 EVに大博打
第10章 膨張 スリーダイヤを飲み込む
第11章 不正 完成検査問題の闇
第12章 転落 容疑者になったカリスマ
おわりに 漂流する日産・ルノー・三菱連合