内容紹介

GAFAは栄えても、国は富まず--
イノベーションの本質、そして経済との関係を解き明かす。


イノベーションはいくつも起きているのに、国の経済成長につながらない。なぜなのか。果たして、イノベーションは本当に機能しているのか。元日経エレクトロニクス編集長、元東京大学大学院教授で技術ジャーナリストとして社会を見つめてきた著者が、シュムペーターの原義やイノベーションの場の変遷、インターネットや半導体などICTイノベーションの歴史をたどり、イノベーションの本質をひもときながら、国内の安易なイノベーション万能論に警鐘を鳴らす。

■目次
第1部 イノベーションと経済
 第1章 イノベーションが経済成長に寄与していない
 第2章 イノベーションとは何か
 第3章 「安く買って高く売る」、この活動だけが利潤を生む
 第4章 農業圏の余剰労働力が高度成長をもたらす
 第5章 戦争と不況のGDPへの影響
 第6章 ICTに固有の問題
 第7章 資本主義は永続可能か

第2部 イノベーションの場の変遷
 第8章 中央研究所の時代から企業家の時代へ
 第9章 産学連携--イノベーションと大学
 第10章 通信の自由化とデジタル化
 第11章 モジュール化による分業
 第12章 設計と製造の分業

第3部 ICTイノベーションズ
 第13章 電気通信メディアの誕生
 第14章 プログラム内蔵方式とコンピューターの誕生
 第15章 トランジスタのアナザーストーリー
 第16章 半導体集積回路とシリコンバレーの成長
 第17章 マイクロプロセッサーこそ「新結合」の好例
 第18章 インターネットI 未来の図書館
 第19章 インターネットII パケット交換
 第20章 インターネットIII 『未来の図書館』の完成
 第21章 インターネットIV 民主主義をどう担保するか

■『イノベーションは技術革新とは違う。』
『イノベーションはまずなによりも経済成長の原動力だという認識も広まってきた。』
『しかし同時に、イノベーションへの期待があまりに高まり、イノベーションを万能とする論説の多いことが、私には気になっていたのである。』(本書「まえがき」より)

■「イノベーション」という大きな言葉を、問い直す。
碩学の徒である著者が「イノベーション」に関する誤解をひとつひとつ解きほぐし、過度な期待に溺れてしまわないよう、ひとつの糸に撚り直していく。企業や集団が利潤をあげる際の基礎となる「差異」の創造について、著者は「未来と現在の間の差異とは」と読者に問いかけ、そして答えを提示する。「イノベーション」という多数の意味を含みうる大きな言葉を、自身の中で問い直す機会を与えてくれる500ページの大著。