内容紹介

おすすめポイント

「私と薬師寺」 ―平山郁夫―
古都奈良、とりわけ薬師寺とは縁浅からぬものを感じる。古刹薬師寺は法相宗に属し、その宗祖が玄奘三蔵である。仏法の真理を求め中国からはるばるインドに旅したあの三蔵法師である。その旅の一端を「仏教伝来」という作品にまとめ、画家として生きる方向を見い出した自分にとっては大の恩人である。
その玄奘の功績を描くことを薬師寺から依頼された。
せっかくのお話であり、この際自らも絵殿を寄進しこれを画業の総決算にしようと無謀にも思いたった。
過去十年ほどの海外での取材は、実はこの壁画を描くためだった。玄奘の歩いた跡はくまなく辿ったつもりである。壁画の総延長は五十メートル近くになろう。恐らく全部の仕事が終わるまでにはなお十年はかかろう。
精も根も尽き果ててしまうかも知れない。しかしそれとて、玄奘が味わった旅の辛さに比べれば易いことなのだろうと思う。