内容紹介

なぜ人類だけが繁栄しているのか?科学力と創意工夫で食料生産力を向上させてきた歴史を解明し、21世紀の食料危機を見通す。

おすすめポイント

■食料生産から見た壮大な人類史
人間は生息数を何倍にも増やし、生息分布を拡大したという意味において、生物界における極端な成功例である。何十億人もの人々のための食料生産と住宅供給は、地球を変える巨大な力になっている。
数万年前までは他の動物と同様に野生動植物の狩猟と採取にだけ頼っていた人類が、なぜ食料生産に成功し、爆発的に生息数を増やすことができたのか?
本書は、コロンビア大学教授でマッカーサー・フェローでもある著者が、人類が自然をコントロールし、食料生産を増やしていった過程を歴史的観点から描くものである。

■窒素の化学合成、リン鉱石の採掘、灌漑、動力開発、殺虫剤、遺伝子改良……
本書では品種改良で味の良い穀物だけを残すために火を使った歴史や、土地改良のために大西洋を越えて鶏糞を運んだ歴史、ハーバー・ボッシュ法の成功で窒素化合物の合成が可能になった肥料革命、殺虫剤であり農薬であるDDTによる食料増産など、人類が増殖し、栄華を極めるに至った歴史を見ていく。
人類の食料生産は、緩やかな増産ペースが続いたのちに、踊り場にさしかかって停滞し、そこからブレークスルーによって新たな増産段階に入るという3つのプロセスを繰り返している。
20世紀の急激な増産ペースは過去にない記録的なものだった。その結果、人口の激増、肉食文化の横行、都市人口の増加、食料供給の世界的な不平等といった問題が起きている。
そしていま、食料増産は踊り場に差し掛かっている。気候変動、種の絶滅、水不足……21世紀の諸問題は、過去には見られなかったものばかりだ。この難問に対して、人類はどのような創意工夫ができるのか?