内容紹介
【第7回日経小説大賞受賞!】江戸に“テーマパーク”をプロデュース! 庭園美の極致にして奇抜な趣向で将軍、大名を魅了した尾張徳川家下屋敷「戸山荘」を造った、身分を越えた男たちが繰り広げるユーモアとエスプリに富んだ愉快な時代小説!おすすめポイント
2015年の第7回日経小説大賞には江戸中期の尾張徳川家・戸山下屋敷にあった名庭を作った男たちの物語が選ばれた。辻原登、髙樹のぶ子、伊集院静の選考委員3氏に評価されたのは、その落語のような上品なユーモアに富んだ語り口。人を楽しませる趣向を凝らす人たちの物語を、滑るような筆運びで愉快に描き、決して史実から逸脱することなく、ハッピーエンドで終わらせた筆力が高く評価された。おかしみと軽みで一気に読ませる、日経小説大賞では過去になかったタイプの作品。では、どういう物語かというと、
寛政4年(1792年)夏――
日本橋から二里ほど西にある戸塚村に住む外村甚平は、村の南にある尾張徳川家の戸山下屋敷に御用聞きとして出入りし、村人を送り込んでは庭の手入れをさせている大百姓。甚平はある日、屋敷奉行から将軍・徳川家斉が屋敷に御成になる予定だと知らされる。屋敷は敷地面積13万坪のうち九割が庭園。荒廃しているが、巨大な池があり、江戸一番の高さを誇る山があり、神社仏閣もある。将軍はこの庭を通り抜けるという。100年ぶりの御成まで半年、甚平は屋敷奉行から将軍を喜ばせるための庭の仕掛けを考えて欲しいと持ちかけられる。「人生最大の儲け話」と、甚平は次々と趣向を凝らしたアイディアを試していく。おもてなしの喜びとさらなる金儲けに目覚めた大百姓が、殿様に請われ、村人たちを束ね、江戸の世の"テーマパーク"であるユニークな大名庭園をプロデュースする。果たしておもてなしは首尾良く運ぶのか?
という「お噺」のようなとびきり楽しい時代小説。