内容紹介
シンガポールと日本を舞台に、生来のエスタブリッシュメントが重ねていく大人の情事。優雅で匂い立つ官能美に満ちた傑作長編!おすすめポイント
美と恋に生きる名家の男たちは、書物を愛でるように、女と情を交わし、
自由になるために、女から愛を求める。
東京・京都・シンガポールを舞台に、家柄にも資産にも恵まれた50代の男たちが、甘美な情事を重ねていく、その果てに――
日経朝刊連載時から話題沸騰! 絢爛たる贅沢な官能美の世界を描く傑作長編
大手医薬品メーカー九代目、久坂隆之は53歳。副会長という役職と途方もない額の資産を与えられた素性正しい大金持ちで、シンガポールと東京を行き来し、偏愛する古今東西の書物を愛でるように女と情事を重ねる。スタンフォード留学中に知り合った友人、田口靖彦は老舗製糖会社の三男。子会社社長という飼い殺しの身が、急逝した妻の莫大な遺産により一変。家の軛から自由になるために、女からの愛を求め、京都で運命の出逢いを果たす。時代の波に流されず、優雅で退嬰的な人生をたゆたう男たちが辿り着いたのは―― 日経朝刊連載直後に、「新聞史上最高のエロス」と取り上げたメディアもあり、濃密な性描写がまずは注目されたこの作品、もちろん、日本の“上流階級”の絢爛な官能美の世界はたっぷりご堪能いただきたいのですが、魅力はそれだけではありません。
この作品の背後に流れているもうひとつのテーマ、それは日本の上流階級の“世代交代”です。詳しくはお読みいただくしかないのですが、欧州の貴族の、現代における盛衰を描いたイタリアの映画監督、ルキノ・ヴィスコンティの「山猫」などに通じるものがあります。美と恋に生きる男たちが重ねてゆく甘美な情事を通して、現在の日本で起こっている“地殻変動”も見えてきます。
そして、読み始めるとくぎづけにされてしまうのが、性愛における男女の心理描写。官能に溺れているように見えて、実は男は女をこう見ているのか、実は女は男をここまで見抜いているのか、ということが怖いほどに鋭く描かれています。まさに、大人の小説です。