内容紹介
小説の楽しみのひとつは、全体の流れや構造とは関係のない細部につまずくこと――書物の頁の風景を通して「読む」ことを綴った52篇おすすめポイント
■堀江敏幸氏による、読書をめぐるエッセイ集。■日経新聞土曜朝刊の連載随想が、待望の単行本化!
堀江敏幸さんがなれ親しんできた書物の頁の風景の中で、なにかの拍子によみがえってくる人の姿。「たいていはだれもが知っている人物の傍らの、淡い接触をしただけの存在で、顔の輪郭がはっきりしていないことさえあるのだが、思い出したらそのまま忘れて終わりというわけではなく、何年か経つと、べつの角度で刺激された記憶の片隅から、また不意にあらわれたりする。」「私は実際に、思い出されてはじめて、なるほどその折の景色のなかに目立たない見えない傍点が打たれていたのだと気づかされるような影たちと、何度も遭遇してきた。」――文芸作品の楽しみ、それは細部につまづくこと。「読む」ことをめぐる52篇。