内容紹介

なぜ日本は絢爛の輝きの末に転落し、30年間苦闘を続けたのか?バブル崩壊直後の「経済白書」を執筆した官庁出身エコノミスト渾身作。

おすすめポイント

21回読売・吉野作造賞受賞
日本経済新聞「エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10」第1位(2019年)

◆政策混迷が招いた熱狂、転落、苦闘――「経済白書」でバブル崩壊を分析、未曾有の事態に向き合い続けたエコノミストによる同時代史と次代への教訓。

◆1989年1月から始まった平成経済は、試練の連続となった。バブルの崩壊と不良債権問題、アジア通貨危機と金融危機、デフレの進行、人口減少社会への突入など、我々がこれまで経験したことのない難しい課題が次々に現れた。
これら課題への政策的対応については評価が分かれるが、著者は、必ずしも満足すべきものではなかったと考える。お手本のないこれら諸課題に対しては、どうしても実験的、試行錯誤的な対応にならざるを得なかった。こうした実験・試行錯誤は成功したとは言えず、デフレ問題、人口問題、財政・社会保障問題などについては、現在においても引き続き政策的対応が必要な状況となっている。
平成時代に直面してきた多くの課題は、未解決のまま平成後の時代に引き継がれる。その意味で、平成時代において日本の経済社会が直面してきた諸課題と政策的対応を振り返ってみることは、これからの政策的対応の道を開くという意味からも重要なことだと言える。

◆本書の特色はまず第1に、マクロ経済を中心に解説していることである。平成経済は、企業経営、産業・技術などの面でも大きな変転を遂げてきたことは明らかであるが、著者はこれまでほぼ一貫してマクロ経済の動きをフォローしてきたので、そこに集中することが比較優位と考えたからである。
第2は、単に事実を述べるだけではなく、多くの出来事の相互関係を明らかにし、できるだけストーリー性を持たせるようにしたことである。平成時代の経済に起きたことは意外な展開に満ち満ちており、実にドラマチックだ。そうしたエキサイティングな歴史の動きを描こうとした。
第3は、できるだけ政策的教訓を導き、後世の参考にしてもらおうとしている。そのためには、どうしても政策的評価が必要となる。評価を下すとなると、著者の価値判断が含まれることは避けがたい。このため、中立的な書き方にさほどこだわらず、率直に著者の考えを前面に出している。

※日本が、そして世界が激変した30年間を、知の巨人たちが検証し、未来を語る。『平成の政治』(御厨貴・芹川洋一編著)、『平成の経営』(伊丹敬之著)と併せた「平成三部作」の一冊。平成経済を振り返る本は、いろいろと刊行されていますが、本書の特徴は、日本経済とマクロ経済政策について50年間分析してきた官庁出身エコノミストが書いたということだと思います。著者の小峰隆夫氏は、1993年度、94年度には経済白書を執筆してバブル崩壊を分析。以来、未曾有の事態が続く日本経済に向き合い続けてきました。

例えば、90年代前半の記録をひもとくと、バブル再来の危惧や、物価高のせいで生活の豊かさが感じられない、といった世論が根強く、政策にも影響してきました。また、早期の公的資金注入に踏み切れなかったことが、平成不況の長期化につながったと言われています。

異次元金融緩和の継続、進まぬ財政再建などの問題は、平成のうちに解決に向かうことはできず、令和の時代に引き継がねばなりません。過去のことを忘却せず、当時を思い起こし、未来に活かす教訓を引き出すため、ぜひ本書を手にとっていただければと思います。

(2019.4.15)