内容紹介

「ONLY、OR」から「AND、WITH」の時代へ

コロナ禍で日常生活や働き方が激変し、心のどこかで「これまで通りの生き方で本当にいいのか」と悩んでいる人も多いのではないだろうか。ニューノーマルは見たことのない世界ではなく、「デジタル化」「多様性」「環境意識」といった後回しにしてきた問題が目の前に突き付けられただけ--。JR東日本でエキナカや地域活性化を成功させてきた著者が、「『What if?』という自問自答が必要」「仕事と生き方は融合していく」「サステナブルが日常に」など、個人や企業の「これからの生き方」を提示する。

アフターコロナの世界では古くからあるものづくりや文化に恵まれた「地域」に大きな可能性があり、そのカギとなるのが「よそもの」だという。テレワークの普及や副業解禁で都心のビジネスパーソンが「よそもの」として地域のものづくりやビジネスに参画し、マーケティングやマネジメントの知見を持ち込むことでシン・チホウ(新・地方)が生まれるというのだ。本書では著者が地域の1次産業の可能性に目覚めたきっかけとなった青森のシードル工房「A-FACTORY」をはじめ、鹿児島の超高級リゾート「天空の森」、「小さくて強い農業」を提唱する茨城の「久松農園」、英国南西部ウエールズにある古書を観光資源にした町「ヘイ・オン・ワイ」などの事例を紹介している。

「私自身も『よそもの』として生きてきた」という著者の体験談も読み応え十分。民営化直後の文系女性1期生としてJR東日本に入社し、鉄道事業を経験せずにエキナカや地域活性化プロジェクトを立ち上げるなど、新規事業のオンパレード。49歳で上級執行役員としてカルビーにヘッドハンティングされるも、「好き」という気持ちが先に立って失敗した経験も。極めつけは50代半ばでの起業と、英国美術系大学院への留学。デジタルネイティブ世代に交じり、あらゆることがオンライン化された手続きや「生き物の動きをロボットで表現する」授業などに四苦八苦した。これらの経験を通じ、現代は二者択一の「ONLY、OR」ではなく、やりたいことをいくつも選べる「AND、WITH」の時代だから、勇気を持って一歩踏み出すことを提案する。

≪目次≫
【まえがき】 「よそもの」がシン・チホウを生む

【1章】ニューノーマルの世界は10倍速で訪れた近未来の姿にすぎない
  3大要素「デジタル化」「多様性」「環境意識」
  「What if?」という自問自答が必要

【2章】仕事と生き方は融合
  「地域」が都市生活者の働く場に
  ワーケーションに必要なのは「数種類の環境」
  田舎暮らしの課題は「足」
  副業解禁も地域産業を活性化
  仕事と生き方が融合   ワークライフインテグレーションのすすめ    
  人生100年時代の学び方、働き方
  働く「場」だけ変えても効率が悪くなり、ストレスに
  仕事と生き方の融合に成功したブルネロ・クチネリと群言堂

【3章】サステナブルが日常に
  プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)  
  廃棄素材×テクノロジー×デザイン=新しい価値  
  「Cradle to Cradle(ゆりかごからゆりかごへ)」の精神
  ルールチェンジがもたらす新しいマーケット  
  日本のサーキュラーエコノミーはブルーオーシャン
  世界的な「アニマルウェルフェア」の動き
  「エシカルこそラグジュアリー」の時代
  エシカル度を一目でチェックできるアプリ
  スモール イズ ビューティフル
  天然素材あふれる地域の1次産業にチャンス
  ダウンサイクルではなく「アップサイクル」

【4章】消費者の意識が変わった
  女性誌がこぞって「SDGs」「サステナブル」を特集
  「共感消費」が持続可能な世界をつくる鍵になる
  「お取り寄せ」「贈り物」で消耗している人が多い
  「語れる」パーソナルギフトに注目
  ポリシーを語れるものなら、同じ品を贈り続けることが意味を持つ
<対談>消費者に服や食といった線引きはない   ファクトリエ代表 山田敏夫氏
  商品の「物語」で自己肯定感が満たされる
  うんちくと心を揺さぶる「語り」の違いは“熱狂”

【5章】地域のものづくりにチャンスあり
  青森「A‐FACTORY」の立ち上げで学んだこと
  目指したのはロスのない「サステナブルなものづくり」
  観光地づくりで地域を巻き込む
  地方には地元の人が気づかない“埋もれた宝”がたくさんある
  「捨てるのが当たり前」は当たり前じゃない
  同じ農家でも、情報感度の差が収益の差に
  フランスの有名シェフたちが沖縄産黒砂糖を持ち出した
  農業にはマーケティングが必要
  日本の農業の弱点の一つは「マネジメントの弱さ」
  マーケットニーズを意識すれば、地産品の収益はもっと上がる
  農業「6次産業化」の誤解   すべて自前でやるのが唯一の正解ではない
  収益に直結するのは「ナラティブなものがたり」  
  都心在住者が「農業」に魅了される理由
  デジタル化が進むほど、人は「手触り感」を求める
  長寿番組「ザ!鉄腕!DASH!!」が投げかけるメッセージ
  多様化する農業は面白い
  やってみて分かった小ロットの課題
  日本の流通構造にはまらない素材の価値を伝えたい
  「半サラ半農」を実現するには
<対談>「小さくても強い農業」の条件   久松農園代表 久松達央氏
  フィジカルな能力や技術よりも「立地」が命
  栽培品目が多種類のほうが成功しやすい
  良いコミュニティーに所属し、深く根を張る
  レタスの収穫だけでは人は育たない
  農業は最高に知的で、面白いゲーム

【6章】 「よそもの」が観光も変える
  トーマス・クックの破産が象徴する、旅行業界のデジタル化
  「よそもの」が観光地に新たな風を吹き込む
  古書を観光資源にした町「ヘイ・オン・ワイ」
  マーマレードやジャムも、町おこしの起爆剤になる
  チーズを観光資源にした「モン・ドール」
  ケンブリッジの蒸留所では日本のユズを使ったジンが人気
  廃トンネルが天然のワイン貯蔵庫に
  多様性ある「四季」も貴重な観光資源
  優れた料理人は優れた食材に引っ張られる

【7章】 「よそもの」を楽しむ
  私自身も、「よそもの」からスタートした
  地元民が消極的だった、越後湯沢駅リニューアル
  結果がすぐ出るところにリソースを集中させる大切さ
  成功法則を見失ったカルビーでの経験
  「よそもの」がいて当たり前の組織
  50歳を過ぎてからの学び直し
  レジリエンスと慣れ
  RCAの授業で感じた日本との教育の違い
  デジタル時代に「理系」「文系」のカテゴライズは無意味
  「ONLY, OR」から「AND, WITH」の時代へ

【あとがき】