内容紹介
マクロ経済学の世界的権威が読み解く財政課題、そして日本への教訓日本は現在の金融政策・財政政策を維持できるのか?
長期に及ぶ低金利、目標に到達しないインフレと低成長……。金融政策が実効下限制約に直面する中で、本当に必要な経済政策とはいかなるものか。マクロ経済学の世界的権威が、経済の安定化に向けて、財政政策の役割を明らかにする。
財政政策については2つの対立する見方がある。1つは高水準の債務から債務削減を絶対的な優先事項とするものであり、もう1つは低金利を理由に財政には余地があり、債務の増加も排除すべきではないとするものだ。
一方、本書では、低金利は債務の財政面の費用だけでなく、債務の厚生面での費用も低下させるとして、低金利によって金融政策の余地が縮小する中で、財政政策をマクロ経済の安定化のために活用することの利点を提唱する。
日本は現在の金融政策や財政政策を続けることができるのか。財政破綻、金利上昇のリスクをどう見るか。日本が長期停滞を脱するための正しい方向性とは?
今後の日本のマクロ経済政策の方向性の輪郭を説得的に示し、1990年代以降の日本の金融政策と財政政策について丁寧に分析。近年進められているマクロ経済政策の再検討において決定版となる一冊。
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ハーバード大学教授、元米国財務長官
ローレンス・サマーズ 推薦!
「ブランシャールの最高傑作。ブランシャールは本書で、財政政策と財政の持続可能性の分析を新たな高みに導いた。財政赤字を心配する人も、緊縮財政を心配する人も、本書のバランスの取れた洞察に溢れる分析に学ぶべきだ。」
目次
日本語版への序文序文
第1章 本書の概要
第2章 導入
2‐1 中立金利r*
2‐2 安全金利とリスク金利(rとr+x)
2‐3 中央銀行の役割── r=r*の実現を試みるもの
2‐4 なぜ「r<g」が重要なのか
2‐5 名目金利と実質金利、実効下限制約
2‐6 結論
第3章 金利の変遷、過去と未来
3‐1 安全金利の変遷
3‐2 金利と経済成長率
3‐3 人口の影響
3‐4 結論
第4章 債務の持続可能性
4‐1 (r-g)<0のときの驚くべき債務ダイナミクス
4‐2 不確実性、持続可能性、財政余地
4‐3 効果的な持続可能性ルールは設計可能か?
4‐4 公共投資と債務の持続可能性
4‐5 複数均衡と中央銀行の役割
4‐6 中央銀行、救済、帳消し
4‐7 結論
第5章 債務と財政赤字による厚生面のコストとベネフィット
5‐1 確実性下の債務と厚生
5‐2 不確実性下の債務と厚生
5‐3 財政政策、実効下限制約、生産の安定化
5‐4 議論をまとめる
第6章 財政政策の実践
6‐1 世界金融危機後の緊縮財政
6‐2 日本の経験──成功か失敗か
6‐3 バイデンの賭け──政策金利、中立金利、経済成長率
第7章 要約と今後の課題
参考文献
訳者あとがき