内容紹介

チャット、オンライン会議、AI、リモートワーク、フリーアドレス…
ここ数年で、私たちの「働き方」は大きく変化しています。
しかし、その変化を俯瞰してみると、本当に、「働きやすくなった」「効率的になった」といえるでしょうか?

「働く時間や場所が選べるようになった分だけ
メンバーが分散してクリエイティビティが発揮されなくなった」
「いつでもどこでも仕事ができるようになった一方、
いつも気が休まらなくなった」
「チャットやメールなど様々な連絡手段が増えた分だけ
対応に追われ、集中力が発揮できない」
このような悩みを持つ人もいるのではないでしょうか。

本書では、なぜ選択肢が増えたはずなのに、働きづらさや非効率がなくならないのか、
そして、増えた選択肢の中で、働く人が自由で快適に成果が出る職場はどうすればつくれるのかを考えます。
・自分やチームのクリエイティビティを高めたい
・休みはとっているはずなのに、休まらない
・毎日ただ忙しく、余裕がない
・残業を減らしたのに、アイデアが湧いてこない
・チームの一体感や所属意識を高めたい
・管理職の役割を再設計し、士気を高めたい
・職場に漂う停滞感を払拭したい
・「人それぞれ」という言葉が気になって、部下の指導がしづらい
……このような課題を持つ方必読の、新しい職場の教科書です。

【まえがきより】
本書は、「職場」という働く場所と、そこで働く人たちとの関係を考え直すための本である。出発点にあるのは、これまで当たり前とされてきた職場の手法やルールの多くが、すでに時代に合わなくなり、それが私たちの「働きにくさ」を生み出しているのではないか、という問題意識だ。

労働・職場調査の研究者としての約30年におよぶ私自身の経験、さまざまな研究者や実践家と重ねてきた議論、なかでも哲学や社会思想という人文知、マンガや映画という文化的コンテンツによる知見を踏まえ、日本の職場における「人と働く」の再設計を、少しでも前に進めたいと考えている。

【目次】
はじめに 快適な職場の設計図をつくろう

パートⅠ 職場のコミュニケーションのチューニング
1 メール・チャット・SNS・・・… 便利なツールの裏でたまり続ける「疲れ」の正体
  騒がしすぎる職場とたった一つの頭脳/「どこでも仕事ができる」×「いつでも接続」という日常/ミニマリスト的な働き方は解決策になるか/「職場のコミュニケーションを整える」現実的な着地点

2 「多動力」は働きにくさ解消の武器となるか
「多動」の価値の転換点/なぜ「多動」が戦略として有効なのか?/情報収集に求められる多動性 津田左右吉的読書のすすめ/同時選択かつ多接続への罠/YouTubeやTikTokの「むなしさ」にのまれないために

3 自由化された働き方が「働きづらさ」を生み出す皮肉
「働き方の自由化」は、職場をどう変えたのか?/グループダイナミックスにおける集団特性/立場が変われば「見える世界」はまったく違う/全体の利益のために必要なのは、個人の我慢か、権力か?

4 緩衝材化する管理職の悲哀と逆転した権力構造
管理職はなぜ「罰ゲーム」なのか/「個人にとっての最適」と「チームにとっての最適」は矛盾する/優れた管理職が使いこなす「見えない強制力」/問うと不満は顕在化する

5 フリーアドレスは新しい創造性を生み出すのか
Space(空間)とPlace(場所) 流動的場所としての「職場」の役割/人は職場でどのように過ごしているのか? 「働く日常」の観察から分かること/フリーアドレスで集団のクリエイティビティを生む方法

6 急増する「伝えているのに伝わらない」現象の謎
「言語化」がテーマのビジネス書が増加中? 注目されるわけ/自由を再び奪うしか道はないのか?/求められているのは単なる「言葉の力」ではない/ロッカー室に見る理想の「劇場型コミュニケーション」

パートⅡ 職場のクリエイティビティを高める武器としての「言語化」と「休暇」戦略

1 職場に溢れる「言語化はうまいのにクリエイティビティはない人びと」
ブレインストーミングの限界/なぜ多くのブレストが、「盛り上がったのに創造性はなく終わる」のか/ありきたりな言葉のほうが何かと重宝されるわけ/クリエイティビティと言語化のサイクル

2「スナフキンの孤独」が職場の強さにつながる理由
「自分の言葉」の見つけ方/「からだ」と「ことば」は共鳴している/失われた孤独を求めて/スナフキンの感じている「大きなよろこび」を取り戻そう/誰もが持つ「孤独への隠れた欲求」に目を向けるということ

3 なぜ残業を減らしたのに、アイデアは湧いてこないのか
「働き方改革」から「休み方改革」へ? 生産性の罠/「日本人は休み下手」は本当か?/日本における「埋め込まれた休暇」の時代/「疲れをとる」だけでは物足りない? 創造のための休暇の役割/自分を休暇モードに切り替える力/「心の残業状態」の終わらせ方

4 実はサボりではない 職場でのぼんやりとクリエイティビティ
戦略的に休むための「切断的休暇」の3つの機能/その1 マインドフルネス――「今、ここ」に向かう意識/その2 マインドワンダリング――発想の源泉となる「心ここにあらず」状態/「分かりやすい説明ができる人=優秀」という誤解/「ひらめき」状態のつくり方/その3 コンテンプラチオ――精神的活動の労働からの解放/無理解な上司の介入が、休みをむしろ「非生産的な怠惰」に変える

5 同じだけ休んで、生き生き輝く人・普段に戻るだけの人
学び続けるための「捨てる」習慣/あえて「効率を悪くする」という生みの苦しみ/変化に対する不安を好奇心に変えるには/「遊び心」と「学び」は実は不可分/積極的休暇の4機能/切断と接続の休暇のマトリックス

6 凡人だって束になれば、「1人の天才」を超えられる? 普通の人の力の生かし方
クリエイティビティは「天才」だけが持っている特殊能力か/多くの企業では実は天才は不要であるわけ/同質性と閉鎖性へ逃げる社員たち/【クリエイティブな集団の条件1】「カッコ悪いこと」を話せる/【クリエイティブな集団の条件2】「誰でも参加できる」/「何でも話せる」「誰でも参加できる」を両立するには?

パートⅢ 居心地のよい協働共同体をつくる

1 盛り上がりは意図してつくれるか  停滞しない集団の設計思想
機能するコミュニティの条件/コミュニティに実装すべき「設計思想」とは?/コミュニティのための「常連排除」という考え方 2ちゃんねるのアーキテクチャ/これって公開? 非公開? 内輪が外輪になる時代/議論を深めるPUBLICの再生は可能なのか?

2 「人それぞれ」が議論を殺す? 理想のコミュニケーション空間とは
コミュニケーション空間の3種類/〈公共〉の3条件/「OPENでCOMMON」は実現可能か/「議論の気まずさ」に、私たちはどこまで耐えられるのか/一人になれるソロめし、空気を読まなくてもよいめしバナ/〈共創的な公共〉を歴史的パースペクティブのなかに位置づける/集団の理想像から逆算して現実を設計するには

3 職場内の摩擦や衝突で生まれる「知的資本としての多様性」
あるトヨタの営業担当の話/一つの組織が内包する「複数の文化」/「市民」や「公共」という言葉がどこか他人事な理由/複数の空間を共有し移動することの価値と意味/「組織内の激しい文化摩擦」を恐れるな/知的資本としての多様性

4 分散するチームをマネジメントするための 「記憶」の活用法
短時間勤務スタッフの「帰属意識」はどこから生まれるか/「同じ思い出を一緒に思い出せる」という仲間の証/コミュニティの核としての「共有記憶」をつくる/文化とは、みんなの記憶を運ぶ舟である/異なるものを持ち寄って共同性を生み出す「分有」の可能性

5「大きな物語」が失われた社会で 「仕事の価値観」を取り戻す
現代日本における「物語の喪失」/土木映画に見る、社会の「大きな物語」/「物語のリアリティ」はなぜ復元できないか/不発に終わった「ゼロ年代の回想砲」 世界がうらやまない日本/現代日本企業に残された「表層だけの人情」

パートⅣ 日本の現場主義をREデザインし、乗りこなせ

1 取り戻すべき「現場の力」の正体と雇用システムの合理性
メンバーシップ型雇用の二重構造/私たちの持つ「日本人像」はどこからきたか/日本的雇用システムの「合理性」/不確実性への合理的な対処法とは/「合理性への執着」という非合理性と公共的動機/あらためて日本的雇用システムを問い直す

2 これからの出世の基準としての「工程設計力」
職場で元気が出る「科学の言葉」を探す/雑な「日本的」に含まれる、相反する2つの強み/熟練者にだけ見える「作業と作業の間の連携」/技能のバラツキ・変動的な状況に対応した新しい「流れ」/工程設計力は「協働共同体を構想する力」/「流れ」をつくれる人材を見つけるための2段階の選抜システム

3 職場の強みを深掘りし、「つくる論理」を組み替える
「会議室よりも現場」で育てられる知/イノベーションの旗を振っても、変わらなかった日本企業/「コントロール不能な現場」しかない現場主義の悲劇/深層にある「つぎつぎになりゆくいきほひ」とは?/現場が強さを取り戻すためにできること