企業ネットワークの構造を可視化する「ネットワーク図(ネットワーク構成図)」を描く上では、様々な定石があります。本特集は書籍『ネットワーク図の描き方入門』(2025年12月22日発売、日経BP)から抜粋した内容を基に、これらの定石を易しく解説します。第4回はネットワークのリンクを示すヒモ(線)の表現に焦点を当てます。
箱(ノード、インターフェース)の次は、リンクを示すヒモ(線)の表現を見ていきます。第2回では2つのコツを紹介しました。基本は実線で描くことと、交差をできるだけ避けることですね。他にも線の太さや端点の処理、直線と折れ線の使い分けなど、良いネットワーク構成図に仕上げるために役立つ様々なコツがあります。今回は5つを一挙に紹介します。
(1)太さで帯域を表現する
まずは太さです。ヒモの太さを変えることで意味を持たせられます。帯域の広さを表す際によく使われます。太いリンクほど帯域が広く、より多くのトラフィックを流せることを示すわけです。太い「パイプ」ほどたくさん流せるという物理のアナロジーを応用しています。
ただし帯域の種類が多くなると、太さだけでは見分けにくくなります。そのような場合は太さに加えて別の表現手法を組み合わせるとよいでしょう。例えば色を使い分けられる場合は、太さと色を組み合わせて帯域を表現できます。
(2)端点記号でインターフェースの違いを表す
ネットワークでは、機器が搭載する「インターフェース」にリンクをつなぐ際、何らかのトランシーバーモジュールが必要なことがあります。例えば光ファイバーケーブル用のモジュールを扱うときは、本体のスロット、SFP(Small Form-factor Pluggable)トランシーバー、光ファイバーケーブルという構成になります。
トランシーバーモジュールは、使用するケーブルや規格に応じて様々な種類があります。このトランシーバーモジュールの使い分けは、線の端点記号による違いで表現できます。トランシーバーモジュールはリンクの終端に接続するモジュールですから、そのアナロジーとして分かりやすい表現でしょう。
ケーブルも使用する規格やケーブル長などに応じて使い分けます。ケーブルの種類を区別したいケースでは、線の明度や色を変える方法があります。例えば色を利用できる環境であれば、銅線ケーブルは銅の色を模した茶色、光ファイバーは、ケーブルの被膜によく使われるオレンジ色で表現するといった具合ですね。
(3)直線と折れ線では直線がお薦め
ネットワーク構成図のリンクに使う主な線には、直線と折れ線があります。原則は直線をお薦めします。ネットワーク構成図は多くの場合、構造や対称性をはっきり見せたいという目的が込められているからです。折れ線は線が交差するとき、このような構造や対称性を識別しにくくしてしまいがちです。
コアスイッチに多数のアクセススイッチをつないだネットワークについて、直線と折れ線で描いた図を比べてみましょう。折れ線で表現すると構成パターンが読み取りにくくなります。線の交差が増え、どのポートがどこにつながっているのかがたどりにくくなっているのです。
ただし、折れ線を絶対に使ってはいけないわけではありません。折れ線は水平・垂直で角度が必ずそろう特徴があります。この特徴を生かせる場合には使って構いません。
具体的には3つのケースがあります。1つ目は、折れ線を使うことによって、他のノードと線が交差するのを避けられる場合。2つ目は、折れ線を使っても配線や構造のパターンを問題なく表現できる場合です。
リンク(ヒモ)の密度を上げたい場合が3つ目です。折れ線で表現すると線の位置関係は常に垂直または水平になります。つまり線の角度の調整は必要ありません。線が折れるポイントと線の間隔でコントロールできます。折れ線は直線に比べ、狭いスペースに複数の線を入れやすくなります。密度を上げ、スペースを圧縮できるわけです。
(4)同じグループの線の間隔はそろえる
複数のヒモが並ぶ場合、同じグループとして扱う線は間隔をそろえましょう。スイッチが複数のケーブルを接続しているネットワーク構成図を表現する際に、ヒモの間隔を全てそろえている場合と、一部の間隔を変えた場合を見てみましょう。
ヒモa~eは役割の違いが特にないように見えます。一方、ヒモ1~5では、ヒモ2と3が他とは異なるように見えます。これは近いものが1つのまとまりとして識別されるためです。
同じグループの線は間隔も同じように合わせておく必要があります。逆に異なるグループにしたい線があるときは、間を開けることで違いを表現できます。
(5)色を変えてケーブルの帯域や用途を区別しやすく
複数の色を使い分けられる環境では、色によってヒモの表現に幅を広げられます。代表的な使い方を挙げます。
1つ目はケーブルで伝送できる帯域や、その帯域を伝送できるケーブルの種類を表現する使い方です。帯域の種類が多いときは太さだけでは違いを識別しにくくなります。そこで色を使い分けるか、太さと色を組み合わせることによって分かりやすく表現できます。
2つ目はケーブルの運用上の用途を色で表現する使い方です。本番環境と検証環境が同じフロアに混在する場合、本番環境用は赤、検証環境用は青といった具合に、使用するLANケーブル(銅線ケーブル)の色を変えることがあります。ネットワーク構成図でも、同じ色で描くことによって業務に使いやすい図にできます。
3つ目の使い方は、特定のセグメントやVLANに、赤や緑といった特定の色を割り当てた上で、そのVLANにつながるリンクの色を合わせるものです。
単独のVLANのトラフィックが流れるリンク(スイッチのアクセスポートで接続されるリンク)はそのVLANと同じ色、複数のVLANのトラフィックが流れているリンク(スイッチのトランクポートで接続されるリンク)は、黒で表現するといった具合です。絵の具などで色を混ぜると黒くなっていくという混色のアナロジーにもなっています。
[日経クロステック 2026年1月15日付の記事を転載]
萩原学(著)、木村博之(監修)/日経BP/3300円(税込み)






