企業ネットワークの構造を可視化する「ネットワーク図(ネットワーク構成図)」を描く上では、様々な定石があります。本特集は書籍『ネットワーク図の描き方入門』(2025年12月22日発売、日経BP)から抜粋した内容を基に、これらの定石を易しく解説します。第3回はネットワークのノード(構成要素)を表現するコツを紹介します。
ネットワーク機器などのノードは一般にアイコンや四角形(箱)で表現します。いずれもネットワークを構成する登場人物(機材・機能)の主体に関する表現です。それぞれの特徴から、使い分けるポイントを見ていきましょう。
アイコンは分かりやすい、四角形は情報を追加しやすい
アイコンを利用するメリットは分かりやすさです。アイコン自体に意味が付与されているからです。「このアイコンはルーター」などと、図を見る側の共通認識になっていることも期待できます。ただ、凡例による意味の定義は必要です。
一方、ノードを四角形(箱)で表現するメリットは、箱の中に情報を追加しやすいことです。物理・論理合成図では、ノードにマッピングする論理ネットワークの情報、例えばVLAN(Virtual Local Area Network)などのネットワーク機能や設定を、箱の中に盛り込みます。
ノードを四角形で表現することによって、複数の機能や設定をグルーピングするものとして捉えています。その上で、ノードの役割を示すためにアイコンとノード名を付記しています。これによって、このノードを複数の情報で表現して取り違えを防止し、他の図とのつながりを強調しています。
色が使える環境ではレイヤーの識別などに便利
ノードに関係する主な表現方法には、「色」「形状」「大きさ」があります。これらを含める場合のコツを見ていきましょう。
色を利用できる環境では、ノードの色を適切に使い分ければ分かりやすさが高まります。例えば、ネットワークの展示会「Interop Tokyo」では会場ネットワークのネットワーク構成図が描かれます。そのネットワーク構成図は、担当するレイヤーによってノードの色を分けています。レイヤー1のノードは青、レイヤー2は緑、レイヤー3は赤といった具合です。
この特集では大半のアイコンをグレートーンで表現しています。それでも一定の視認性を確保しています。アイコンは形状や明度といった要素でも情報を表現できるからです。
アイコンの大きさはそろえたほうがよい
アイコンの大きさはそろえることをお薦めします。大きさにバリエーションを作ると、描き手が意図していない余計な意味を見る側に探させてしまう可能性が高いからです。
アイコンに複数の線をつなげる都合で、線の密度を下げるためにコアスイッチだけアイコンを大きくしたとしましょう。このような場合、図を見る側は様々な情報を思い浮かべる可能性があります。
1つ目は、物理的な大きさです。コアスイッチはシャシー型などの大きな筐体(きょうたい)と考えるかもしれません。2つ目はポート数です。コアスイッチは多くのポートを備えていると考える可能性があります。
3つ目に考えられるのは処理能力の高さです。他の機器よりも大量のトラフィックを処理できるとも読み取れます。4つ目は重要性です。コアスイッチを大きく目立たせることで、重要な役割があると強調していると考えられます。
このように大きさが違うだけで、読み手の解釈は様々に分かれます。統一しないと誤解を招きかねません。
縦横比や角の表現もそろえる
ノードを四角形の箱で表現するときは、大きさに加えて、縦横比や角の表現も気を配りましょう。角の表現とは、四隅を直角にするか丸めるか、さらに丸める場合はどの程度丸めるかです。大きさや角の丸め方などを変えると、冗長化のペアなどが分かりにくくなります。
ネットワーク構成図のセオリーでは一般に、水平に並べる要素を共通のグループ、あるいは冗長化されたペアとして扱います。ノードの箱(四角形)の形状が異なると、グループやペアと断言できません。
同様に線の太さ、種類、色などのパラメーターも同じかどうかの判断に影響します。「同じと捉えてほしいもの」が正しく受け取れるように気を付ける必要があります。
異なる要素には異なる表現を使う
ネットワークを設計する場面では、いくつかのノードを1つにまとめ、まとめて扱うことをネットワーク構成図の中で示したい場合があります。例えば冗長系のペアがそうですね。拠点やフロアやラックといった物理的な拡張単位も、まとめて扱いたい要素です。
冗長のペアはトポロジーのパターンや、図の中の位置関係でも分かるように表現できます。一方、フロアやラックといった単位は、位置関係だけでは表現しきれないことがあります。そうした場合には他の図形で囲って視覚的にグループを表現できます。
ただし、グループを表す線を工夫なく描くと、図が分かりにくくなりやすい点は要注意です。例えばノード同士を結ぶヒモと、グループを表す囲みを同じ色・同じ線で表現した場合、線同士が干渉し、紛らわしく見えます。
この状況を改善する主な方法は2つあります。1つは、線の色と太さを変えて違いを明示する方法です。トーンを抑えた色を使えば、ネットワーク構成図ではより重要なノードやリンクを目立たせられます。
2つ目の方法は、線を使う代わりに図形を塗りつぶす方法です。輪郭線がなくてもグループの範囲を表現できます。ただ、色によっては他の図形やテキストラベルが読みにくくなります。
1つ目の方法でグループを分かりやすく表現できています。ただし、グループを示す線が相応に主張しています。ノードやリンクをはっきり目立たせたい場合は、2つ目の塗りつぶしをお薦めします。
[日経クロステック 2026年1月14日付の記事を転載]
萩原学(著)、木村博之(監修)/日経BP/3300円(税込み)






