「勉強はできるけど仕事がうまくいかない人」の典型は、一見非合理的な客の満足を軽視したり、勉強ができるからとエラそうにして嫌われたりする人である――。そうビジネスコンサルタントの山崎将志氏は言います。日ごろから経済活動の現場に触れて会社を見る目を磨き、働きながら投資を行うことで、「普通の人」が相当の資産を持つことは十分に可能だと教える山崎氏の著書『父さんが教える株とお金の教養。』より抜粋、内容を編集してお届けします。

学校の勉強と仕事の一番の違いは

 例えば、ここに二人の鍵職人がいるとしよう。客から壊れた鍵を直してほしいと頼まれて現場に駆け付けた。一人の鍵職人は5分も経たずにサクッと直した。もう一人はあれこれ試しながら30分時間をかけ、修理を終えた。さて、もし修理の難易度、客の懐具合、料金が同じだった場合、客が感じる満足度はどちらの方が高いだろうか。

 答えは時間をかけて鍵を直した職人のほうではないかと私は考える。なぜなら、「難しい仕事にじっくり取り組んでくれた」と感じる人が多いと思われるからだ。5分で鍵を直した職人には「そんな簡単な仕事に大金を払うのは嫌だ」と感じてしまう。鍵職人が「この技術習得にかかった時間は40年と5分です」と言っても、客には損した気分が残ってしまう。

 受験勉強的に言えば5分で問題解決できる職人の方がエラい。ビジネス的にもその方が生産性が高い。しかし、客の満足度で言えば、雑談を交えたり修理の過程を見せたりしながら時間をかけた方が高い。仕事は客が満足してナンボ。つまり「相手」がある。そして相手の満足度という意味では時に生産性や効率よりも、「どれだけ自分のために尽くしてくれたか」と感じる、効率とは対極にあるところが重要だったりする。さらにこの非効率性がクチコミを呼んで客が増え、結果的にビジネスの効率性が上がる。

 これが学校の勉強と仕事の一番の違いだと私は考えている。日経ビジネス人文庫『父さんが教える株とお金の教養。』の中では、我が家がiPhoneではなく格安スマホを利用している理由として「同じ結果が出るなら最も低コストな方法で」という話を紹介している。

 私がときどき作る「インチキ焼豚」(※)はその考え方の日常生活への応用例の一つである。ものの10分でできる料理だが、食べると半日煮込んだ焼豚と遜色ない。しかし中華料理店でメニューにこのインチキ焼豚を加えても、売れないだろう。どう見ても手間暇かかってないからである。

 さらに、ほとんどの仕事は複数の人たちが協力して進めるから、チームワークが大事である。上下左右の人間関係を円滑にできないと、うまくいかない。

 「勉強はできるけど仕事がうまくいかない人」の典型は、一見非合理的な客の満足を軽視したり、勉強ができるからとエラそうにして嫌われたりする人である。

「インチキ焼豚」のレシピ……(1)豚バラ(あるいは豚ロース)薄切り100gに塩コショウを振り、2枚ずつ不ぞろいに折りたたみ、ビスケットのような形に整える。両面に小麦粉を薄く振る。(2)フライパンにサラダ油をひき、中火で片面ずつ3分前後、ほどよく焦げ目がつくまで焼く。(3)しょうゆ・酒・みりん各大さじ1とおろししょうが小さじ1を入れ、沸騰したら火を止める。

勉強と筋トレはやっただけ成果が出るが…

 私は常々「勉強と筋トレは裏切らない」と考えている。どちらもすべてが自分次第で結果を得る過程で他人の影響を全く受けない。勉強には素質が必要だし、筋トレもどんな体になれるかは体質が大きく影響するとはいえ、やればやっただけ成果が出る。ゴールに至る道筋がいくつかあるけれど、その方法はきちんと確立され、検証されている。自分なりのやり方はあるようで実際はない。

 加えて学校の勉強は範囲が決まっていて満点がある。試験に出ない範囲を勉強する必要はないし、100点を取れたら60点しかできない他の科目の勉強に時間を使った方がいい。

 でも仕事の場合は範囲が決まってないし、大事なことは相手によって変わる。100点を取れたら120点、150点を目指さないと競争相手に負けてしまうし、点数を付けられない仕事も多い。

勉強には多くの場合、「正解」があるが、仕事の「正解」は相手や状況によって変わる(写真:sheilaf2002/stock.adobe.com)
勉強には多くの場合、「正解」があるが、仕事の「正解」は相手や状況によって変わる(写真:sheilaf2002/stock.adobe.com)
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 一般論で言えば点数が付けられる仕事の給料は安くて、部下に点数を付ける人がそれよりちょっと高くて、採点基準はよく分からないけど結果はしっかり持ってくる人の給料はもっと高い。そして最も給料の高い仕事は、点数の基準自体を作り上げる仕事だ。つまり新しいビジネスを興したり、チームワークが円滑になるような仕組みを作ったりする仕事のことである。

 だから、私がいま学校に通っている息子たちに将来のために伝えたいのは、勉強はもちろん大事だが、部活や文化祭の活動を一生懸命やって、日ごろから友達と仲良くするのも同じように大切だ、ということである。学校の仕組みに批判的な人は少なくないが、そう考えれば極めてよくできたシステムだと私は考える。

日経ビジネス人文庫『 父さんが教える株とお金の教養。
投資は「普通の人」がお金持ちになる唯一の道? ニトリ、セリアからエヌビディア、GAFAMまで企業の儲(もう)けのしくみに注目しながら親子の対話形式で展開する異色の株とお金儲け入門書。

山崎将志著/日本経済新聞出版/990円(税込み)