猫は本好きです。人間が本を読んでいるとじゃまをしにきます。では、良書に登場する名言を猫に教えてもらおう。今回は、認知科学者の今井むつみさんが書かれた『 「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策 』から名言を紹介します。周囲の人といいコミュニケーションをとるためのヒントとなる言葉です。

認知科学者の今井むつみさんが書いた『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』では、「うまく伝わらない」という悩みの多くは、「言い方を工夫しましょう」「言い換えてみましょう」「分かってもらえるまで何度も繰り返し説明しましょう」では解決しないと述べられています。
私たちは仕事では「報告・連絡・相談」を求められ、本屋さんに行けばたくさんの「伝え方」や「ものの言い方」の本が並んでいます。ところが今井むつみさんは、話せば分かるはずという考えは、言葉のやりとりへの過信かもしれない、と言うのです。
今井むつみさんはさらにこう述べています。
例えば「ネコ」という言葉を聞いたときに、(中略)昔引っかかれてけがをした経験から「凶暴」なイメージを持つ人もいれば、ぬいぐるみのような「愛くるしい」イメージを持つ人もいるでしょう。「やわらかい」というイメージを持つ人もいれば、「不潔」なイメージを持つ人もいるかもしれません。
そう、私たちはそれぞれがまったく異なる「知識の枠組み」「思考の枠組み」を持っているため、たった1つの名詞「ネコ」と聞いたときでさえ、無意識に頭の中に思い浮かべるものはまったく別ものである可能性がとても高いのです。そして、こうした脳内で描かれるイメージを共有することは難しく、隣の人がまったく違うイメージを持っているとわかっても、そのイメージを明確に聞き取ることすら、私たちにはできないのです。『「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?』p.28-30より
どんなに言葉を尽くしても、頭の中をそのまま共有することはできません。あなたが意図した通りに伝わっているか、正しく理解されているかどうかは、実際のところ、「あなたとは関係のないところ」で決まってしまいます。今井むつみさんは、「相手に正しく理解してもらうことは、相手の思い込みの塊と対峙(たいじ)していくこと」「相手を正しく理解することは、自分が持っている思い込みに気がつくこと」と述べています。
だから、「『話せば分かる』は幻想」なのです。自分の気持ちを全身で表現する猫のほうが、人間よりも、いいコミュニケーションをとりやすいのかもしれません。
[猫から一言]
大事なのは、「言い方」よりも「心の読み方」。
