優れたリーダーシップを発揮するために必要な能力は、部下と接しているそのときに養われるものではありません。もし「リーダーとして自信がないし、向いていない」「とにかく多忙で、頑張りすぎている」「手応えを感じない」という悩みを抱えているならば、見直すべきは「1人で過ごす時間」だと、新刊『できるリーダーが「1人のとき」にやっていること マネジメントの結果は「部下と接する前」に決まっている』(日経BP)の著者、大野栄一氏は指摘します。リーダーが1人の時間に磨くべき「4つの力」について、抜粋して紹介します。
優れたリーダーが1人のときに磨いている4つの力
リーダーシップの質を高めるためには、リーダーが1人の時間を使って、自分自身を振り返ることがとても大切です。
振り返りの習慣は、自分の考え方や感情、行動をじっくり見直し、成長につなげることを指します。
たとえば、
- 「あのとき感情的になった理由は、何だったのか?」
- 「そもそも自分はどんなリーダーになりたいか?」
- 「自分の振る舞いが組織の士気にどのような影響を与えているのか?」
- 「自分は、周囲からの意見を受け止めているか?」
- 「最近経験した失敗や課題から学んだことは何か?」
といった内省(自分自身を見つめ直すこと)がリーダーシップを磨く基本です。
1人の時間に「自分を見つめ直す」ことで、リーダーに不可欠な「4つの力」を育てることができます。
- 思考の自由度
- 問いの力
- 喚起力
- 構造デザイン力
これらの力がリーダーシップにどう役立つのか、それぞれの特徴を簡単に説明します(それぞれの力の伸ばし方は、各章を参照してください)。
①思考の自由度:思い込みを捨てて、ものごとを自由に見る力(1章で詳述)
「こうあるべきだ」という固定観念にとらわれずに、公平に、客観的に、柔軟にものごとを捉える力です。
たとえば、「この部下はこういう性格だから、こう接するべきだ」「部下より経験を積んでいる自分の考えは正しい」と反射的に判断せず、ものごとをフラットに見ることが重要です。
思い込みや固定観念は、私たちの視野を狭めたり、新しい発想や選択肢を見えなくしたりします。そのため、自分がどのような思い込みにとらわれているのかを知り、柔軟な発想を取り戻すことが必要です。
1人の時間は、「思考を自由にする時間」です。
②問いの力:適切な質問を通じて、問題の本質を明らかにする力(2章で詳述)
なぜ、問いを持つことが大切なのでしょうか。それは、問いが創造性を引き出すきっかけになるからです。
問いを立てることで私たちは、これまで見えていなかった視点や解決策を探求し始めます。問いは、創造性の扉を開く鍵です。
リーダーがどのような問いと向き合っているかが、リーダーシップに反映されます。たとえば、「なぜ、部下はミスばかりするのか?」と否定的に問うのではなく、問いの向きを部下(外側)から自分(内側)へ向けて、
「部下の悲しみを打ち明けられる存在になれているか?」
「どのようにすれば○○を実現できるか?」
といった、自分自身を再検討できるような問いを持つことができれば、自分の行動や考え方を根本から見直すことができます。
1人の時間は、「本質に目を向けさせてくれる問いを立てる時間」です。
③喚起力:部下の内面に語りかけ、「仕事の面白さ」や「働く意味」を呼び起こす力(3章で詳述)
「やる気を出せ」と口にするだけでは人は動きません。リーダーの役割のひとつは、部下の中に眠っている(部下が自覚していない、あるいは十分に活用していない)能力や自主性を引き出すことです。
「こうしろ、ああしろ」といった具体的な指示を出さなくても、部下が自分で考えて動けるようにするためには、「喚起力」が必要です。
たとえば、部下が毎日、通勤時に疲労感を覚えているとしたら、それは「仕事が面白くない」と思っているからかもしれません。リーダーは、自分の、そして部下のものの見方を豊かにして、「この仕事をやる意味がある」と感じられるように喚起力を発揮する必要があります。
1人の時間は、「喚起力を高める時間」です。
④構造デザイン力:仕組みや構造に落とし込み、変化をもたらす力(4章で詳述)
構造デザイン力とは、組織が自然とよい方向に動く仕組みをつくる力です。
たとえば、ペットボトルのキャップは、構造デザインの好例です。皆さんは、「自分で自由にペットボトルを開けている」と思っているかもしれませんが、あの「回して開ける」という動作は、ペットボトルの「構造デザイン」に促されてやっているに過ぎません。
同様に、組織内でも、「自然と動く仕組み」が必要です。たとえば、「部下からの報告や相談が足りない」と感じたら、定期的なヒアリングの時間を設けたり、専用の報告シートを導入したりするなど、相談しやすい時間や仕組みを整えることで、報連相のモレがなくなります。
1人の時間は「人を動かす仕組みを生む時間」です。
4つの力は相乗効果で高められる
4つの力は相互に関連しています。リーダーが1人の時間を活用し4つの力を伸ばすことで、次のような好循環が生まれます。
↓
本質を問うことができる(②問いの力)
↓
自分や部下が、仕事に面白さを覚える(③喚起力)
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仕組みや構造から変化をもたらす(④構造デザイン力)
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再び思い込みを捨て、ものごとをフラットに見る(①思考の自由度)
↓
……
まずは「思考の自由度」からアプローチすることで、リーダーとしての自分を磨いていくことができるでしょう。
大野栄一著/日経BP/1980円(税込み)

