リスキリング(学び直し)が注目される今、リベラルアーツ(教養教育)としての茶道を見直してみませんか。戦国大名や近代の実業家たちがたしなんだ茶道。ビジネスやアカデミア、アートの世界を代表する先駆者たちが、日本の伝統文化である茶道を現代の新しい視点で読み解きます。今回はマネックスグループ会長の松本大氏に、茶道との関わりや今後の展開についてお聞きしました。(聞き手は、日経BP 総合研究所上席研究員 大塚葉)
※本記事は、
エンジン01文化戦略会議
が2024年1月に開催したイベント「エンジン01 in 市原」での講義「今こそ茶道!茶の湯にまつわるいろんな話」と、インタビューを基に構成しました。
松本さんは、伊藤穰一さん、落合陽一さんと一緒に登壇した「エンジン01 in 市原」の講義「今こそ茶道!茶の湯にまつわるいろんな話」で、ナビゲーターを務めました。この講義で茶道の話をすることになったきっかけを教えてください。
エンジン01文化戦略会議は、毎年1回オープンカレッジを行っています。今回、講師を担当する僕たちメンバーに「今年の講義で話す新しいテーマはないか」と聞かれ、ジョイ(伊藤穰一氏)と落合さんと僕が茶道をやっていることからこのテーマを提案し、お互いにどのようにお茶と関わっているのか話そうということになりました。
松本さんご自身は、2年前から茶道の稽古をなさっています。正確には再開したのでしたね。
最初は2016年に、ある人に誘われて遠州(えんしゅう)流茶道に入門しました。家元の直門で稽古を始めたのですが、1、2回行ったきり足が遠のいてしまって。2021年の年末に別の人から直門の納会に誘われ、5年ぶりに皆さんと会ったとき「もう一度始めてみよう」と翌年から稽古を再開しました。
改めて真面目に取り組もうと思って、3年分の月謝を前払いするため銀行で手続きをしたところ、「お茶の世界で、月謝を(手渡しではなく)銀行振り込みするとは」とちょっと笑われましたが。
道場への往復は社用車の中で仕事ができるので、稽古のために割く時間は最大で1時間ほどです。ジョギングしたり音楽を聴いたりしていても、仕事など別のことが頭に浮かんでしまいますが、お茶の稽古をしている間だけは他のことは一切考えず点前(てまえ)に集中できるのがいいですね。
そのうちに、ジョイも茶道(裏千家)をやっていて、しかも自宅でお茶を点(た)てているという話を聞いたのです。負けず嫌いな性格が出て、自宅に茶道具をそろえ、アマゾンでキャスター付きの昇降式テーブルを買って、毎朝立礼(りゅうれい)で抹茶を点てて自服(じふく)するようになりました。
ジョイは凝り性で、彼の自宅での練習でも袴を着てお茶を点てたりしているのです。僕も影響されて、その話を聞いた日に銀座に行って袴を買って帰ったりしました。
彼が茶道をやっていることを知ったことで、僕も稽古を続けるのが楽しくなってきました。二人で一緒に京都まで茶杓(ちゃしゃく)を削って手作りしに行ったこともあります。
知的好奇心を満足させる要素が、茶道にはたくさんある
流派は違っても、お仲間がいると楽しいですよね。講義では、皆さんそれぞれの茶道との関わり方を話しておられました。松本さんはどちらかというと、お点前がお好きなようですね。
僕の場合、落合さんやジョイのように茶道具を作ったり、千利休の功績を知ることにはあまり興味がないのですが、点前をしてお茶をいただいたり、訪ねてきたお客さんにお茶を勧めたりするのが楽しいです。
薄茶の点前をちゃんとやると、だいたい15分ほどかかります。その間、お客さんといろいろ話ができる。そのコミュニケーションの時間が好きです。点前をしながら話を組み立てて、誰かと一緒に落ち着いた時間を過ごせるのがいいですね。
落合さんもジョイも頭が良くて「知の巨人」のような人たちなので、歴史や道具など彼らの知的好奇心を満足させる要素が、茶道にはたくさんあるのだと思います。
僕はトレーダーの仕事をやってきたせいか、過去の歴史より現在のマーケットを見ることに関心が行くのかもしれません。今、この瞬間にお客さんと話をする。そのための仕立てとしての茶道に興味を感じています。
講義では、茶道で目指す姿や到達点について他のお二人にお聞きになっていました。松本さんご自身は、今後茶道とどのように関わっていきたいですか。
お茶はいろいろな意味でとても深いので、二人もそこを楽しんでいますね。僕も歴史にそれほど興味がないといっても、日本で何百年も続く歴史や文化の流れをフレームワークに取り入れ、それを15分くらいの点前の中でスナップショット的に体験できる茶道は、とても面白いと思います。
例えばジョイと落合さんは裏千家で、僕は遠州流ですが、異なる流派同士で集まる「異流派茶会」をやってみても楽しいのではないかと考えています。
大塚葉が選んだ、茶道に興味を持った人にお薦めする入門書籍
取材・文/大塚葉(日経BP 総合研究所) 写真/稲垣純也
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