株式投資では、しばしば「買えばよかった」「買わなきゃよかった」というネガティブな感情が生じる場面があります。そんな時、どうすればいいのでしょうか? マネックス証券 チーフ・ストラテジスト広木隆さんの『 株はずっと上がるもの 誰も書けなかった株式投資の真実 』(日経BP)から、株式投資でのストレスを避けるヒントや、「バブル」との向き合い方について紹介します。ヒントはPER(株価収益率)にあります。

PER25倍以上はバブルと思え
非常にざっくりした目安ですが、現状に鑑みると、日本株のPER(株価収益率)の上限としては25倍までは許容できる、というのが僕の考えです。25倍までは耐えられます。ただし、それを超えるような相場が示現したら、そこから先はバブルの領域だと考えられます。
もちろん相場はオーバーシュートがつきものですから、完全にバブル化したら25倍では止まらずに30倍になるということもあり得るでしょう。PER30倍というのは益利回り3.3%で、2%の成長期待を加味すれば5%強です(注:益利回りとは、PERの逆数。その企業が1年で稼ぐ利益は株価の何%に当たるかを測るもの)。まだギリギリ説明をつけようと思えば説明がつく水準です。しかし、おそらくそのような状況では長期金利が上がって3%に達しているでしょう。
今回は詳しく触れませんでしたが、株式のバリュエーションを考えるときに金利と比較することはとても重要です。安全資産とされる長期の国債利回りが3%のときに、リスクのある株式の期待リターンが5%程度では株式の魅力は低いと言わざるを得ません。
念のため、お断りしておきますが、これは相場が過熱してじりじりと株価が上昇していく中で、PERも高くなるという状況です。リーマンショックやコロナ禍など過去に何度もあった「ショック」によって企業業績が急激に落ち込んでPERの分母である利益が急低下することによるPERの上昇とは状況が異なりますので、そこはしっかり分けてとらえてください。まとめると、PERが、
25倍以下:許容できるレベル
25倍~30倍:バブル化を警戒するレベル
30倍超:金利との比較で株式の魅力が低い水準
ということです。したがって、PERが25倍を越えたら少しずつ、降りる準備を始めてください。
バブル化した相場でどのように振る舞うか
PERが25倍を超えたら相場から降りろというのに、なぜ「少しずつ」なのか、と思われた方もいるでしょう。
先述した通り、相場にはオーバーシュートがつきものですから、バブル化するほど過熱した相場ではほぼ間違いなくPER25倍では止まらないと思います。どこまで行くのか、相場の天井は誰にもわかりません。
また、相場のピークにピンポイントですべて売り切れるひとはいません。ですから売ってから、まだ高値があった、なんていうことはざらです。「鯛焼きの頭としっぽはくれてやれ」などと言って、自分を慰める格言もありますが、自分が売ってからさらに上値追いが続くのを見るのは非常に悔しい。
そこでまず「半分売る」ことをお勧めします。これは、相場全体がバブル化してそこから退避するときだけでなく、このあとでお話しする個別株の売りにも利用できます。
「そろそろ売り時か」と思っても、「もっと上値があるかも」と思うと、なかなか売る決心がつきません。そうしているうちに相場が下がってしまうと、「ああ、あのときに売っておけばよかった!」とそれはそれで後悔することになります。
そんなときは「半分売っておく」にかぎります。コップに水が半分入っている。半分は入っていない。水を見るか、「空」を見るかです。もっとわかりやすい話にするなら、ワインでもいいです。ボトルにワインが半分残っている。「ああ、もう半分しか残っていない」と悲しむか、「まだ半分残っているじゃないか」と前向きにとらえるかです。要は気持ちの持ち方です。
自分が売ったあとでもっと株価が上がっても、売りを半分にしておけば「まだ半分持っている」と思えばよいのです。反対に下がったら、「あそこで半分でも売っておいてよかった」と思うのです。なぜあそこで全部売ってしまわなかったのかとか、売らなければよかったとか、暗いほうを考えればきりがありません。半分売っておけばどちらかは当たるのですから、その当たったほうだけを見てポジティブに捉えることが肝要です。
この応用で、半分ではなく、3分の1ずつ、4分の1ずつなど細かく分けて売るという手もあります。とにかく相場の天井では売れないので、売りのタイミングを分散させることは有効です。
繰り返しますがバブル化した相場はどこまで行くかわかりません。「相場は恐怖の崖を駆け上がる」という表現があります。「こんな相場は間違っている」「バブルだ」「とても正当化できる値段じゃない」という声を逆にエネルギーにして燃え盛っていくようなものです。投資家は怖いと思っても誰も降りられない、いわゆる〝FOMO〞(Fear Of Missing Out: 取り残される恐怖)を感じてしまうからです。
そんなとき、くれぐれも「空売り」などは考えないようにしていただきたいと思います。
異常な状況は必ず修正されます。過剰に割高になった株価も必ず下がります。しかし、それがいつかは誰にもわかりません。ケインズは「市場というものはあなたの財布が持ちこたえられるよりも長期間にわたって間違え続けることがある」と言ったそうです。
広木隆著/日経BP/1980円(税込み)
