私たちの幸福度を左右するのは、家族、パートナー、友人、同僚、そして何より自分自身との「つながりの質」です。身近な人間関係を良好に保つことができれば、あらゆる困難も乗り越えやすくなると英国の心理療法士フィリッパ・ペリーさんは説きます。今回はシリーズ累計300万部のペリーさんの新刊『身近な人間関係が変わる 大切な人に読んでほしい本』(高山真由美訳/日本経済新聞出版)の抜粋・再構成をもとに、幸せな人生をかなえるために必要なたった1つの心がけを紹介します。

ときには人間関係がつらくなることも

 孤立や孤独を経験すると、私たちは他人を警戒し、信用しなくなります。同じようなことが何度か起こると、人はそれをパターンとして学び、自分を守るために引っ込み思案になります。拒絶から身を守ろうとして、弱みを見せることに慎重になるのです。

 人間は群れで暮らす動物です。群れをなす動物は、集団から引き離されて孤立を強いられたあとに再び群れに戻されると、中心に飛び込むことができずに端のほうにとどまり、孤立に近い状態を保とうとします。これはラットとハエによる実験で証明されていることですが、本能に関わる部分ではヒトの場合にも大きな違いはないように思います。

 ときには、恋人や友人だと思っている大切な人との関係で、いやな経験をすることもあるでしょう。それを1つのパターンとして認識し、どんな経験も多かれ少なかれ同じようなものだ、性悪説は正しい、人間関係など無意味だ、などと思いたくなるのも仕方のないことです。人はもっともらしい口実を考え出すこともできます。しかし、引っ込み思案を正当化する理屈は大敵です。

孤立や孤独を経験すると、私たちは他人を警戒し、信用しなくなる(写真:Mary Salen/stock.adobe.com)
孤立や孤独を経験すると、私たちは他人を警戒し、信用しなくなる(写真:Mary Salen/stock.adobe.com)
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 このような不安や不信を感じたときに、できることは2つあります。1つは、不安や不信に支配され、隠れたままでいること。もう1つは、不安や不信を感じても、とにかく人の中に入っていくことです。隠れていれば、不安をそのまま持ち続けるしかありませんが、不安をあえて受けとめ、行動し続けていれば、やがて不安は小さくなり、人間関係を築くことも、絶対無理だろうと思っていたような人の輪に入っていくことも、できるようになります。

世界はあなたの見方次第

 私たちはときどき、全か無かの思考に陥ることがあります。「人はみな他人のことなんかどうでもいいのだ」「誰だって大事なのは自分だけ」「友情なんてすべて無意味だ」などと考えてしまうのです。こういうフレーズに共通しているのは、例外を認めないところです。人生は常に1か10かだと断定し、その間(2から9)にあるはずのさまざまな経験を否定しています。

 ところが、たいていの物事は2から9にあるのです。「すべて」「みな」「100パーセント」「誰もしない」「絶対ない」などというのは、空想や迷信や机上の空論のようなものとして疑い、変えていく必要があります。私もこういう言葉を使ったことはありますし、これからも使うでしょうが、よくあることだからといって真実だと思い込んではいけません。

 あるいは、別の空想もできます。「誰もが魅力的で知的な人たちで、みんな私に興味を持ってくれている」と自分に言い聞かせたっていいのです。もちろんこれも真実ではありませんが、どうせならポジティブな空想のほうがいいのです。どちらを信じるかによって、他人といるときのあなたのエネルギーの向きや、他人があなたをどう受け止めるかが変わってきます。

 あなたの中に他人についての思い込みがあると、それが現実のものとなることもあります。例えば何かの集まりに出かけ、「私に好意を持ってくれる人など1人もいない」「誰も私と話をしたがらない」「人間関係なんて無意味だ」と考えながら会場に足を踏み入れたとすれば、その思考はどのような振る舞いとなって表れるでしょうか。あなたはどういうオーラを発することになるでしょうか。おそらく、部屋の隅のほうで人とのアイコンタクトを避け、どんな会話にも身構えてしまうことでしょう。

 では反対に、「みんなおもしろくて魅力的な人ばかりで、私と会えたことを喜んでくれている。私はおもしろくて、知り合う価値のある、魅力的な人間だから。みんなに自分の考えを話したいし、みんながどう考えているかも知りたい」と思っていたら、それはあなたの表情や振る舞い、アイコンタクト、オーラにどう表れるでしょうか。きっとあなたは親しみやすく、友好的で、話の分かる人という印象を与えることでしょう。

大事なのは、「ほとんどの人はいい人だ」と信じる気持ちをなくさないこと(写真:Jacob Lund/stock.adobe.com)
大事なのは、「ほとんどの人はいい人だ」と信じる気持ちをなくさないこと(写真:Jacob Lund/stock.adobe.com)
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 大事なのは、「ほとんどの人はいい人だ」と信じる気持ちをなくさないことです。全人類がひどい悪人ということはありませんし、なかには本当に素晴らしい人もいて、そういう人はあなたにとっても楽しくおもしろい人になりえます。

 他者との関係を自分の頭の中だけで築くことが癖になり、相手の動機や思考、感情について、最悪のケースを想像してしまうときもあるでしょう。そして実際にそれを相手に確認したりはせず、悪いのは自分なのに相手を責めるのです。これは誰もが犯す間違いですが、気づいたらやめればいいのです。

オール・オア・ナッシングの思想を捨てる

 他人についてはもっと楽観的になって、安全地帯の境界線をゆるやかに広げ、気を楽にして、余計な心配をしないことです。ヒトにはハエより有利な点があります。それは、自分に本能があることを認め、その本能を理解し、何を優先するかを自分で選べる点です。私たちは本能に惑わされずに、頭脳を使って行動することができるのです。

 自分が他者について想像をたくましくしているときには、それに気づくことが肝心です。そういうときは全体像を見ずに、自分の想像を補強する証拠だけに目を向けたり、オール・オア・ナッシングの考え方にはまりこんだりしているものです。他者に関するネガティブな想像をポジティブな想像に変えれば、それはあなたの表情にも反映されて、人生が180度転換します。

 思考パターンを「みんなひどい」から「みんなすてき」へと修正すれば、人生は大きく変わります。このスイッチを入れるのが得意な人もいれば、勇気をふりしぼる必要がある人もいるでしょう。しかし、希望に満ちた方向に舵(かじ)を取ることで、発芽する「種」もあるのだという事実に目を向ける必要があります。

 この言葉を繰り返してみてください。「あなたも私もみなおもしろくて魅力的な人で、お互いに会えてうれしいと思っている」。もし、「努力してまで付き合う価値のある相手なんかいない」という考え方に慣れてしまっている場合には、練習が必要です。あなたの中にある「言葉にすることで実現する予言」を今すぐ更新しましょう。人生は一度きりなのです。

人生の難局を乗り越え、幸せをかなえるための新習慣。シリーズ累計300万部『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』著者最新刊。英国の心理療法の第一人者が、すべての人間関係の悩みに答えます。

フィリッパ・ペリー著/高山真由美訳/日本経済新聞出版/2200円(税込み)