その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」をご紹介します。今日は関眞興さんの『 キリスト教からよむ世界史(日経ビジネス人文庫) 』。「まえがき」をお届けします。
【まえがき】
半世紀以上も前、知り合いから聖書を貰いました。
私は聖書の「罪なき者、石をもて打て」という一言が印象深く、忘れられません。「ヨハネによる福音書」にある、姦通の罪を犯した女性がイエスの元に連れてこられた場面です。民衆は彼女を批難し、石を投げようとしています。そこでイエスが言った言葉が、冒頭の一言です。民衆は三々五々その場を去ったという展開に心を打たれました。
福音書に収録されたこのエピソードには脚色もあることでしょう。当時の状況判断で、非難しづらくなってその場を去った人もいるかもしれません。
罪を犯さない完璧な人間など存在しません。より良いものを求めてささやかでも努力を惜しまない努力を続けることが必要なのではないかと思います。
キリスト教の中核には聖書があります。多くの人が聖書を、より良い生き方の指針にしたと思います。もっとも、聖書は2000年近く前に書かれた書物で、現在では不合理な記述も指摘されてきているようです。これらを全て否定してしまうことは簡単にできますが、聖書を材料に、物事を考えることも大切ではないかと思います。
キリスト教の歴史には、政治権力闘争といってしまった方がスッキリできるような場面が多くあります。しかし、政治の世界でも、やみくもに合理主義を突き進み意思決定を行うというのは考えものです。一方で教会の側も、社会の変化に応じた新しい考え方が必要になってくるでしょう。
本作は、筆者の個人的な興味をもとに構成してみたものです。
全体の構成は少しだけ自負したいのですが、自身の不十分な理解から、この事項を省略していいのだろうか、もう少し詳細な記述を加えた方がいいだろうか、と思うところもありました。どうして簡単にけりをつけなかったのかと、当時の教会のあり方に疑問を覚えたこともあります。
しかし、その一方で、キリスト教の歴史と伝統の重みのようなものがひしひしと感じられ、何かを変えるというのは本当に大変なことなのだと思い知りました。
この本が読者の皆様の生きる指針になってほしいというような大それた気持ちは全くありませんが、何かを考えていただく一助にでもなれば、それ以上の喜びはありません。
【目次】




