その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は榎本博明さんの『 ビジネス心理学大全 』です。
【はじめに】
ビジネス心理学と言われても、具体的なイメージが湧かないかもしれません。仕事力向上のため、経済学や経営学の勉強をしたり、営業や経理などの自己啓発本を読んだりする人は多くても、心理学を学んでいる人はまだ少数派でしょう。
でも、まだ少数派だからこそ、心理学を身につけていることのメリットが大きいと言えます。なぜなら、ビジネスのあらゆる局面に、じつは心理学が深くかかわっているからです。
たとえば、やる気が今イチ感じられない従業員のモチベーションをどうしたら高めることができるかも、なかなかやる気になれない自分をどうしたら奮い立たせることができるかも、どちらも心理学の問題です。
人事評価に対する不満はどんな職場にもつきものですが、どうして不満をもつのか、どうしたら不満がなくなるのかといった問題も、心理学の守備範囲です。
働く者にとっての最大のストレス源は職場の人間関係だと言われます。実際、職場の人間関係は非常に厄介です。でも、ややこしい人間関係の背後に潜む深層心理を理解することで、職場の人間関係のストレスを和らげることができます。
経営者や管理職は、組織運営に頭を悩ますものですが、効果的なリーダーシップを身につけるにも、組織の意思決定に伴うリスクを防ぐにも、心理学が多くのヒントを与えてくれます。
経営者や管理職にとって何よりも切実な課題は、どうしたら売上げを伸ばせるかということでしょう。そこでマーケティングの手法を工夫することになりますが、それにも心理学の知見がさまざまな形で絡んできます。
結局、ビジネスというのは、心で動く人間が心で動く人間と共に、そして心で動く人間を相手に行うものなので、心の法則を読み解く心理学は、ビジネスのあらゆる局面にかかわってくるのです。
そこで、ビジネスのさまざまな局面に活かせる心理学の知見を集め、ビジネス心理学大全として実践的な形で提示することにしました。そして、具体的なビジネス場面で実際に活かしてもらうべく、Q&A形式で解き明かすことにしました。
ビジネス心理学を標榜する本も出始めてはいるものの、科学的根拠の乏しいものが目立ちます。本書では、ビジネス心理学の正しい知識を身につけ、ビジネスの場で応用してもらうため、科学的エビデンスに基づく知見のみを取り上げています。
全体は5章立てになっていますが、目次を見て、とくに気になるものから読んでみてください。きっとすぐにビジネスに活かせるヒントが見つかるはずです。
このような企画に賛同し、編集の労をとってくださった日経BP日本経済新聞出版本部の細谷和彦さんに、心からお礼を申し上げます。
本書によってビジネス心理学という武器を手に入れ、ビジネスのあらゆる場面で遭遇する問題の解決に活かしていただければと思います。
2020年6月
榎本博明
【目次】