その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は内田和成さんの『 リーダーの戦い方 最強の経営者は「自分解」で勝負する 』です。
【はじめに】
これまで私は経営コンサルタントとして、何百人という経営者の方々、何千人というマネジャーの方々に会ってきました。本書はリーダーのあり方や戦い方について、そうした経験を通して得た私なりの考えをまとめたものです。
あらかじめお断りしておきますが、本書では「こうすればよい」という答えは示しません。こうすればうまくいくといったハウツーや、特定の経営者やリーダーの成功物語はたくさんありますが、それらがそのまま、よいリーダーになるための一般的な答えにはならないからです。
リーダーシップに「正解」はない。これが本書の出発点です。リーダーはこうあるべきだといった教科書的な考えから、いったん抜け出しましょう。
それよりも、いま自分がどういう状況にあるのか、どんな能力や性格の持ち主なのか、だとしたらどんな手を打てるのか、また自分にない能力をどうやって手に入れればよいかなどについて皆さん自身に考えていただき、あなただけの「自分解」を見出してほしいと思います。
さまざまな方法論や特定のケーススタディーは、そうした土台となる考えがあってこそ生きてきます。
リーダーシップのジレンマを乗り越える
本書の構成は、次のとおりです。
第1章では、リーダーシップには正解がないことを明らかにします。これは、リーダーシップについて考えていくうえでの前提条件です。これが答えだという正解、すなわち「シングル・アンサー」はありません。
まずは、いまあなたがいる会社や組織がどんな状況に置かれているか、どんな課題に直面しているか、あなたにはどんな役割が期待されているかを整理していきましょう。
しかし、そのなかには「あなた自身の力でコントロールできること」と「できないこと」があります。両者を混同したままでは、リーダーとして有効な手を打てません。第2章では、この2つを区別していきます。
そして、第3章では、具体的なリーダーの戦い方を見ていきます。
ここで重要なのは、「自分が最も得意な戦い方」にフォーカスすることです。この章では、著名なリーダーや経営者たちの戦い方を類型化した「リーダーシップ・マトリクス」を取り上げます。軍師型、ビジョナリー、堅実派、率先垂範型といった4つのタイプのうち、あなたが最も得意とする戦い方はどれでしょうか。
しかし、それでも、その局面で必要とされているリーダーシップとのあいだにズレが生じることもあります。その場合はどうすればよいのでしょうか。
第4章では、リーダーが直面するジレンマを乗り越えていくための方法を取り上げます。皆さんがこれからリーダーとして成功するためには、どんな経験を積んでいけばよいのか、誰をパートナーあるいはロールモデルにすればよいのかが見えてくるでしょう。
最終章では、リーダーが持つ魅力について、これまでさまざまなリーダーの方々を観察してきた私なりの結論を述べます。特に現代は、答えのない時代です。何が起こるかわからない時代だからこそ、ちょっとした様子見が死を招くこともあります。わからなければ、わからないなりに何をすべきか。混迷の時代に求められるリーダーの条件を探ります。
新型コロナウイルス感染拡大による危機は、まさにそれが当てはまる状況です。政治のリーダーや企業の経営者だけでなく、すべての人に、有事のリーダーシップが求められています。仕事の場合もあれば、家族や地域に関するものもあるでしょう。
本文中でも述べていますが、「平時のリーダーシップ」と「有事のリーダーシップ」は異なります。両者の違いを理解し、自分がどちらに向いたリーダーなのかをきちんと見極めておくことも大切です。
そのうえで、自分らしい戦い方を発揮する、あるいは自分に足りない部分を誰かに補ってもらうことが重要です。
本書が、これから皆さんがリーダーとして成功するための一助になれば幸いです。
2020年6月
内田 和成
【目次】