その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は犬塚壮志さんの『 「よい説明」には型がある。 』です。

【はじめに】◎誰でも「説明上手」になれる11のテクニック

「仲が悪いわけでもないのに、なぜかいつも話が噛み合わない仕事仲間」
「リニューアルした新商品をものすごく丁寧に紹介したのに、『で、前と何が違うの?』と聞き返してくるお客さま」
「大好きなドラゴンズの○○選手について語ったのに、魅力をわかってくれない友人」
「感謝の気持ちをうまく表現できず、すれ違ってしまう家族」
「インド旅行の素晴らしい体験を共有したのに、上の空で聞いているパートナー」

 ……思い当たる方も多いでしょう。そもそもなぜこんな状況に陥るのか。

 それは、「あなたの話に聴き手が興味を持ってくれていない」から。

 背景にあるのは、少しカタい言葉でいえば「コミュニケーションの分断と断絶」です。

 たとえば、ある対象を熱狂的に応援する「推しの世界」内では通じている話が、その世界を出たとたん、まるで理解されないことがよくあります。「分断」です。

「断絶」でいえば、異なる世代間で理解し合うことのハードルが以前と比べて高くなっています。音楽や映画などの趣味嗜好だけでなく、ビジネスシーンでも、各々が育ってきた文化や環境が大きく異なるため、考え方や知識のギャップが激しくなっているのです。

 さらに、同世代であっても、多くの職業で専門性が高まり、ブラックボックス化しやすい業務が数多く生まれています。隣の席の同僚が今どんな仕事をしているかよくわからないという人も多いはずです。働き方・生き方の多様化がこれに拍車をかけました。

 こうしたギャップのために、お互いに話が「わからない」「つまらない」「興味がない」状況が生まれています。

 さらに、最近では画像や動画による情報伝達が当たり前となり、デジタル情報の背後にある重要なポイントを言葉にして伝える説明スキルが向上しなくなりました。

 今、こうした時代だからこそ、「言葉による説明」が何より重要になります。

“日本一”の講師時代、2万人の指導、大学院での研究から編み出した「型」

 ここで、少し私自身の話をさせてください。

 今でこそ「説明」に関する本を何冊も書き、“専門家”と呼んでいただいていますが、そもそも私は、他人に何かを説明するということに対して苦手意識がありました。

 ただ、そんな私も、教育への情熱や、“化学”という教科に対する思い入れが人一倍強く、大学院を卒業すると、すぐに駿台予備学校という大学受験専門の予備校に就職。“説明”を本業とする講師として登壇することになったのです。

 説明が苦手な私にとって、そこからが悲劇の連続でした。

 一方、まわりの予備校講師陣は、びっくりするほど話術に長(た)けていました。

 説明が本当にわかりやすく、しかもおもしろい。

 どんな秘訣があるのだろうと、人気講師たちの授業を何度も見学させてもらったところ、パターン化できる「型」のようなものが潜んでいることに気づいたのです。

 実際に、講義内容を1つの「型」にはめて話してみると、生徒の反応が激変。“受験化学”という地味なネタにもかかわらず、熱心に聴いてくれるようになりました。

 その後、さまざまな「型」を見出し、使えるようになった結果、担当する季節講習会では満員御礼が続出。季節講習会での化学の受講者数は、なんと日本一になったのです。

 その後、独立した私は、“説明のプロ”として、企業向け研修などを通して2万人を超える経営者やビジネスパーソンの話し方のトレーニングを行ってきました。その事例1000人分以上を分析、さらに大学院での言語化の研究という知見も踏まえ、今の時代に必要な説明の「型」を完成させたのです。それが本書で紹介する「11の型」です。

「よい説明」は仕事でもプライベートでも強い味方になる

 話を戻しましょう。「言葉による説明」とは、分断された世界に「橋」を架ける力。つまり、お互いを理解し合うためのコミュニケーション技術です。

 では、具体的にどのような説明スキルか。

 それは、まったく知らない、あるいは、興味・関心がないことでも、相手がそれを聴きたくなる説明です。

聴き手の感情を刺激し、聴きたくなるようにワクワクさせる説明。

 これが本書で定義する「よい説明」となります。

 本書では、この「よい説明」の技術を「11の型」という形でお伝えしていきます。

 これを学び、実践していただくことで次のようなメリットがあります。

・伝えたい内容を、聴き手が最短の時間で正確に理解できる
・スピーチや自己紹介で「できそうな人だ」「この人と仕事がしたい」と思ってもらえる
・プレゼンや会議で自分の提案が通り、やりたいことが実現できるようになる
・初対面の人に「またこの人の話を聴いてみたい!」と思ってもらえる

 また、「型」を用いることで、次の3つが可能となります。

①話を素早く組み立てられる
②説明の成功確率が上がる
③自分独自の型をつくりやすくなる

 ①については、説明したい内容(ネタ)を型に流し込むだけで、すぐに話を組み立てることが可能です。②については、年間1500時間の講義で失敗を繰り返し、そこからうまくいったものを絞り込みビジネスシーンで応用できる汎用的な型にしたので、高い確率で成功するはずです。③については、型を使いながら、それを自然にアレンジすることで、徐々にあなた独自の型をつくることができます。武道の型と同じです。

 本書は、2019年8月に刊行した『感動する説明「すぐできる」型』(PHP研究所)に70ページ超の大幅加筆、再編集をした1冊です。前述した企業向け研修の参加者の皆さんからのフィードバック、大学院での研究の知見も加味して今の時代にぴったりの内容に仕上げました。第1章では「よい説明」ができない原因、第2章では「よい説明」の大原則に言及、第3章~13章が実際の「型」の紹介、巻末には「即効フレーズ」をひと目でわかる形でまとめています。

 聴き手をワクワクさせる「説明上手」となることで、あなたの人生の舞台がさらに広がるお手伝いができたら、筆者として望外の喜びです。

2024年1月 犬塚壮志


【目次】

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