その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は大江英樹さんの『 知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生 』です。

【文庫化にあたって】

 本書は2015年10月に東洋経済新報社から単行本として刊行したものを、加筆修正した上で、日経BPから文庫版として出版したものです。2015年からすでに5年近くたちましたが、今でも多くの方に読んでいただき、いくつかの大学の授業でも使われています。

 本書の最大の特徴は、経済に関する基礎知識を解説することではなく、経済的なモノの考え方をわかりやすく解説していることです。つまり知識ではなく、知恵を身に付けていただきたいというのが、執筆した最大の動機でした。なぜなら知識はいくつになっても学ぶことはできますし、時代によって変化していくことがありますので、常にアップデートしていく必要があります。

 ところが知恵、すなわち「ものの考え方」というのは一度身に付けたら、それは大きな力となります。経済に限りませんが、一番大事なことは「自分の頭で考える」ということ、そのために必要なことが「知恵」だからです。

 今回の新型コロナ禍で今まで以上にそのことを感じるようになりました。特に在宅勤務においては、自分で自分の仕事をどのようにコントロールし、優先順位付けをするのか? あるいは、外出や消費行動にあたっては、なにが合理的で安全なのかを、自分の頭で考えることが求められます。

 仕事の面でも生活の面でも、必要な情報を受け取ったら、あとは自分で考えて判断し、行動することが本当に大切だということをあらためて感じるきっかけを与えてくれたのが今回の新型コロナ禍だったのです。

 さらに言えばコロナ後に来る社会において、起こりうる様々なリスクを考えると「経済とお金」に関して必要となる基本的な知恵を持つことはとても重要であり、それをさらにより多くの人に知っていただくことは必要なことだと思います。そういう意味ではこういう機会にあらためて文庫化して出版することができたのは、まさにとても良いタイミングであり、僥倖であると感謝しています。

 文庫化にあたっては、骨組みを大きく変えることはしていません。「経済の原理原則」とか「知恵」というのはそれほど頻繁に変わるわけではないからです。ただし、単行本の出版から5年も経つと、各種のデータは変わってきたりしていますので、その部分については加筆修正をしています。

 世の中が大きく変わると予想されるこの時期に本書が一人でも多くの方に届き、お役に立てるよう、願ってやみません。

【はじめに】

 この本の目的は、ズバリ、
 人生において大きな損をしないために経済のしくみを正しく知ろう!
 ということです。

 本書には、「経済の基本を知れば、いかに損をせずにすむか」ということが、身近な事例をあげてたくさん書かれています。本当はかなりレベルの高い話なのですが、きわめてやさしく“わかりやすいにもホドがある”をコンセプトに解説しています。
 それは、経済用語の知識を得ることだけではなく、その裏側にある考え方を知ってもらうことが目的だからです。
 私は証券会社で仕事をしていた38年間、3万人以上のお客様に相談やセミナーを通じてお金のアドバイスをしてきました。さらに、「経済とおかね」に関する授業をコンテンツの制作から手がけ、そこで学ばれた方はのべ40万人以上にのぼります。

 独立した現在も、年間100回を超える講演をこなしていますが、さまざまな方から「これ以上ないくらい、わかりやすい」というありがたいお声を頂戴しています。
 また、ファイナンシャル・プランナー(FP)のように資産管理や家計の専門家と言われる人たちからは、「こんな風に話をすればお客さんに伝わるのだということがわかった。自分の仕事の参考にしたい」というお言葉もいただいています。

 経済は決して難しいものではありません。経済を理屈ではなく、ビジネスの現場で体験してきた私だからこそ、そう言い切れるのです。
 経済やお金のことがよくわからないまま、今日まで来てしまった、という方も、もう一度おさらいしてみたいという方にも、面白く読んでいただけたら幸いです。

 この本を読んだ後、みなさんはきっと、“ある感覚”を得るに違いありません。それは読んだ後のお楽しみです。

【目次】

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