その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は榎本博明さんの『 【新装版】かかわると面倒くさい人(日経プレミアシリーズ) 』です。
【はじめに】 「面倒くさみ」の探究
「あー、ホント面倒くさい」
心の中でそうつぶやかざるを得ない相手というのがいるものだ。
あの人とかかわると、なぜか疲れる。そんな相手がいる。
無駄に細かいことにこだわる。すぐにいじける。やたら対抗心を燃やす。持ち上げられないと機嫌が悪くなる。飲むと絡んでくる。面倒くささもいろいろだ。
その手の人物とかかわると、イライラしてストレスが溜まる。「いい加減にしてくれ」と言いたくなる。
タイプはいろいろだが、どんな職場にも面倒な人というのがいるものだ。そういう人物とかかわることで心のエネルギーを吸い取られ、本来の仕事に支障が出ることもある。だが、職務上かかわらないわけにはいかない。
面倒な人は、職場だけでなく、プライベートな場にもいる。友だちにその手の人物がいると、どうにも厄介だ。
仕事で溜め込んだストレスを発散する場であるはずの友だちとの飲み会で、イライラしたり気をつかったりして、さらにストレスを溜め込んでしまうことがある。
ママ友がお茶を飲みながら談笑している様子を見ていても、みんな気をつかってピリピリした空気が漂うのが感じられたりする。きっと面倒な人がいるのだろう。
どこにでもいる面倒くさい人。そんな人のために生活をかき乱されてはたまらない。何とかうまくかわす術を身につければ、心のエネルギーを吸い取られずにすむ。
そのためには、身近によくいる面倒くさい人の行動パターンやその背後で作動している心理メカニズムを知ることが必要だ。
行動パターンがわかれば、向こうの反応を予測しながら、適当にかわすことも可能になる。
心理メカニズムがわかれば、変に刺激しないような対処行動がとれるとともに、その気持ちを理解することで、「まあ、いいか、しようがない」と大目に見ることができるようになり、イライラも軽減する。
こっちがこんなにうんざりしているのに、当の本人は自分が周囲の人たちにとって面倒くさい人になっているとは夢にも思っていない。これは、よく考えてみると、相当に怖ろしいことなのではないだろうか。
もしかしたら、あなたも人から「面倒くさい人」と思われているかもしれないのだ。
じつは私自身、ある種の人たちにとっては、「ものすごーく面倒くさいヤツ」のようなのだ。心理学などを専門にしていると、単に人を観察するだけでなく、人の反応を参考にしながら自分自身を振り返ることも多いため、そうした自己認知もちゃんとある。
でも、ここで開き直ったような言い方をすれば、面倒くさくなければよいのだろうか。無色透明な存在。それは面倒くさくないかもしれないが、何だか味気ない。やはり自分なりのこだわりはもちたい。
ただし、どこにこだわるかが問題だ。それを間違えると、ただの面倒くさい人になってしまう。
増殖する「面倒くさい人」
新装版のための序文
本書が刊行されたときには大きな反響があった。自分の身近にも「かかわると面倒くさい人」がいて、まさにこの本の事例そのものの人に悩まされ、振り回されているという人が、非常に多いのを改めて認識することとなった。
そのような人たちは、面倒な人に心のエネルギーを消耗させられ、困っているが、本書で解説されている「かかわると面倒くさい人」の心理メカニズムを知ることで、相手の心理がわかり、イライラが軽減し、大いに気持ちがラクになったという。「いったい何なんだ!」「訳がわからない」といった思いがイライラを募らせるのであり、面倒な相手の背後に働いている心理メカニズムがわかるだけでも、気持ちがラクになり、余裕をもって対処できるようになる。
本書が刊行されたのは2018年であり、それから7年以上が経過した。その間に、コロナ禍により対面の人間関係からオンライン上の人間関係へのシフトが起こり、またITの急激な進化により私たちの生活にも大きな変化の波が押し寄せている。先の読めない不透明感に襲われ、人々の心は不安定さを増し、衝動がむき出しになりやすくなっているため、「かかわると面倒くさい人」がますます増殖しているように思われる。
そんな時代には本書が処方箋として非常に有効なのではないかとの声があり、新装版を刊行する運びとなった。今回も、日経BP日経BOOKSユニットの長澤香絵さんに大変お世話になった。この新装版が、日頃から身近な「かかわると面倒くさい人」に振り回され、心のエネルギーを消耗している人たちにとっての救いになることを切に願っている。
2026年2月
榎本博明
【目次】






