その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は濵﨑潤之輔さんの『 中学英語でつまずいた人が読む本 』です。「Introduction」をお届けします。

【Introduction】

「中学英語」でなぜつまずくのか?

 「今年こそ英語をやり直そう」
 そう決意して本屋に立ち寄り、平積みされた参考書の山から、気になった一冊を選ぶ。表紙には「これなら続く!」「3カ月で話せる!」と、あなたの心をくすぐるフレーズが並んでいます。
 レジを通すときには「今度こそ変われるかもしれない」という高揚感で胸がいっぱいです。新しいノートを買い、最初のページに日付を書き込む瞬間は、まるで学生時代に戻ったような新鮮さすら感じていました。

 しかし、数日たつと違和感が少しずつ顔を出してきます。
 アルファベットのaは「エイ」と読むと教わったのに、catではaを「ェア」と発音するのはなぜなのか。「目的語」「補語」といったつかみどころのない言葉の意味もよく分からないまま、読み進めなくてはならない。
 リスニングでも、bとvの違いが聞き取れず、何度聞いても同じ音にしか聞こえない。
 何をどう整理すればよいのか分からないまま、ノートへの書き込み回数は減り、参考書は机の端でほこりをかぶりはじめます。
 数週間後には、参考書に手を伸ばすことさえ面倒になり、「やっぱり自分には英語の勉強は向いていない」とため息が漏れる──。

 このような経験は、決して特別なことではありません。私はこれまで明海大学、獨協大学、神戸女学院大学、早稲田大学EXT、福岡女学院大学など全国の大学で講師を務めるかたわら、ファーストリテイリングや楽天銀行といった大手企業でTOEIC L&Rテスト対策の研修を行ってきました。その経験からはっきり言えるのは、むしろ同じような道をたどる人の方が圧倒的に多いという事実です。

 やる気はあるのにどうにもならない。その原因は「根気がないから」でも「才能がないから」でもありません。英語が、日本語話者にとって最初から高い壁を備えている言語だからです。

 英語初心者のみなさんがまず手に取るのは「中学英語のやり直し本」(いわゆる中学英語本)ではないでしょうか。これらは確かに初心者に向けた本のように見えます。
 しかし、その多くは「中学で習う文法項目を大人がもう一度学べばよい」という前提に立っており、そのまま大人の学び直しに当てはめても、学習効率やモチベーションの面でつまずきやすい点がいくつもあるのです。とりわけ次に挙げる2つのポイントは、つまずきやすさにおいて、その筆頭となるようなところです。

 まず中学英語本の多くは「文法の説明 → 練習問題 → 定着」だけで構成され、文法の抽象的なルール説明が中心です。大人の初心者は既に日本語の思考習慣や学習スタイルが出来上がっており、抽象的なルールだけを与えられても実際の会話やリスニングで使える形に結びつけにくいのです。
 また、発音や音のつながり(リエゾン)、基本的なリスニングの鍛え方、語順感覚の育成といった中学の教科書では扱われにくい基礎が軽視されているのも問題です。結果、「あれもこれも覚えないといけない」と感じてしまいます。

 本書では、これらの本のように「文法」や「単語暗記」から入るのではなく、言葉の根っこの感覚から丁寧に積み上げていくアプローチを採っています。英語を学び直すときに必要なのは「思い出すこと」ではなく「正しい順番で感じ直すこと」です。音を聞いて、まねて、使ってみる──この自然な流れを取り戻すことが、英語再習得の近道です。

 本書では、まず英語とはそもそもどういう言語なのかを明らかにするところから始めます。
 第1章では、なぜ英語を難しいと感じるのかを、日本語との構造的な違いを交えながら解説します。
 第2章では、英語の基本である「品詞」と「文の骨格(SVOC)」を日本語との比較で扱います。受験文法の暗記ではなく、ネイティブが“意味”をどう組み立てているのかという視点で直感的に理解できるようにします。
 第3章では、「語順感覚」を磨きます。英語では“何をどこに置くか”がすべてを決めます。チャンク(意味のかたまり)を声に出して並べ替える練習を通じて、英語を訳さずに理解する感覚を育てていきます。
 第4章では、日常英会話の9割を支えるとも言われる「便利な7つの動詞」を取り上げます。“get”や“take”といった動詞が持つ“コアイメージ”をつかむことで、暗記するよりもずっと多くの表現を自分のものにすることができます。
 第5章では、リスニング力を取り戻すための音の基礎に立ち返ります。英語の音が聞き取れないのは、単語を知らないからではなく、“音がつながる仕組み”を知らないからなのです。リエゾンやリダクションといった音のルールを、トレーニングを通して体に染み込ませます。
 第6章では、覚えたはずなのにすぐ忘れてしまうという悩みを科学的に分析します。記憶と忘却のメカニズムを理解し、覚え直しのたびに少しずつ定着する復習法を紹介します。
 第7章では、英会話における“暗黙の了解”に焦点を当てます。たとえば“Yes, but…”のように、相手を否定せずに意見を伝える言い回しなど、文化的背景を知ることで「通じる英語」から「伝わる英語」へとステップアップします。
 第8章では、誰もが一度はぶつかる「話す勇気の壁」を取り上げます。発音への自信不足、間違える恥ずかしさ、沈黙の怖さ──こうした心理的な障壁を乗り越えるための、実践的なトレーニング法を紹介します。
 第9章では、“日本語の中にある英語”カタカナ英語を活用したトレーニング法を紹介します。正しい発音と使い方を覚えることで日常会話の幅が一気に広がるでしょう。
 そして最終章では、丸暗記するだけで役立つ「とっさの一言フレーズ」をまとめました。旅先や職場など、すぐに使える実践例を通じて、学んだ知識を自然にアウトプットできるよう導きます。

 不安や疑いがあっても大丈夫です。ここまで読んだあなたは、既に挫折から抜け出す第一歩を踏み出しています。さあ、恐れず次のページから中学英語をもう一度やり直しましょう。

【目次】

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