その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は藤田康人さんの『 ウェルビーイングで変わる! 食と健康のマーケティング 』です。
【まえがき】
2015年にスタートした機能性表示食品制度により、今、特定の健康効果をうたう健康食品が市場には溢れています。しかし、その中でもヒット商品と呼べるものは限られ、市場は当初の期待通りには広がっていません。そんな中、注目を集めているのが、「ウェルビーイング(Well-being)」という潮流です。
意味合いとしては、「健康の先にある、これからの時代・社会における新しい幸せの形」として用いられることが多いように見受けられます。
私は、新卒で入社した味の素という会社で食と健康というテーマに携わり、ビジネスキャリアをスタートしました。当時、ダイエットコークなどのゼロカロリー飲料に広く使われていたアスパルテームという低カロリー甘味料を原材料とした、飲料やヨーグルトなどの低カロリーコンセプト製品を日本のさまざまな食品メーカーと共同開発する担当をしていました。
その後、虫歯予防効果のある甘味料であるキシリトールを、日本を含むアジア市場に導入するためにフィンランドの食品原料メーカーに移り、アジアのマーケティング責任者として15年間、多くの企業とヘルスケアコンセプトの製品開発に携わりました。
2007年に、それらの経験から得た知見とネットワークを提供するコンサルティング会社、インテグレートを設立。長らく人々の健康に関わる多くのプロジェクトに携わってきましたが、健康維持という意味では、それらを「ヘルスケア」、あるいは「ウェルネス」という概念としてとらえてきました。
ヘルスケアとは主に体の健康を保つというアプローチ。
一方、ウェルネスとは精神的健康を含めたやや広い健康ケアのアプローチ。
自分なりにそう理解していました。
しかしある時期から、生活者にとって健康になることは〝ゴール〟ではなく〝幸せになるための必要条件〟と位置付けるべきであり、「ヘルスケア」「ウェルネス」の先にある「ウェルビーイング」という概念こそが食と健康を考えるうえで必要不可欠であると考えるようになりました。
本書では、変化してきた幸せの形から今求められるウェルビーイングとは何か、時代の変遷をとらえながら、現代に必要なヘルスケアビジネスについて考えていきます。
この書籍を通して、今後求められるヘルスケアフードのあり方を考えるきっかけになれば幸いです。
【目次】