その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は堀埜一成さんの『 サイゼリヤ元社長がおすすめする図々しさ リミティングビリーフ 自分の限界を破壊する 』です。
【はじめに】
要領のいい人、チャレンジャーな人、とんとん拍子で出世している人、特定の分野で活躍している人、事業に成功している人、いつも楽しそうに暮らしている人……。
このような人を見て、あなたはどう思っていますか?
要領のいい人は得だなぁ。諦めない人は強いなぁ。やりたいようにやれている人は幸せだなぁ……。それに比べて、自分は今ひとつぱっとしないなぁ。そんなふうに思うことはないでしょうか?
次に示すことに自分が当てはまるかどうか、一度考えてみてもらえないでしょうか。
- 何かに前や上を塞がれているような気がしている。
- 目の前の仕事をそつなくこなしているだけだと感じている。
- 会社や周囲から、問題児・変わった人と見られるのを避けている。
- 良くも悪くも中道を選び、同調圧力に弱い。
- 先に見える困難を想像して火中の栗は拾わないようにしている。
- 「できなかったらどうしよう」とすぐに考えてしまい、行動できない。
- すぐに「どうせ自分には無理」と思ってしまい、ネガティブな気持ちになる。
- あと一歩踏み出した方がよいと頭では分かっているが、思い切れない。
- 一歩前に出たときの成功体験が乏し過ぎて、戸惑い感情が強い。
- 誰かに背中を押してほしいと思うけど、説教されるのは嫌だ。
これらに一つでもチェックが入った人は、「リミティングビリーフ(Limiting belief)」に支配されています。リミティングビリーフとは、自分の行動や考え方にブレーキをかけてしまう「思い込み」のことです。
思い込みですから取り払うことができます。リミティングビリーフを取り払う方法、それが「図々しくあること」なのです。
はじめまして、堀埜と申します。2022年8月まで、外食チェーン「サイゼリヤ」の社長を務めていました。私は自分ではあまり自覚していなかったのですが、「堀埜は図々しいやつだ」と思われていたようです。まぁ、少しは強引なところもあるかな、とは思っていたのですが、まさか図々しいと思われているとは知りませんでした。もしかすると、この自覚の無さこそが、まさに図々しさかもしれません。
しかも2021年1月のサイゼリヤの決算発表会で、「ランチがどうのこうのと言われました。ふざけんなよ!」との私のコメントが広く出回ったことで、なおさら気骨者あるいは反骨者の印象を世間の方々に与えてしまったようです。このときは、西村康稔経済再生担当相(当時)がコロナ禍を踏まえて、夜だけでなく「昼間も不要不急の外出を控えていただきたい」と発言したことに対して言ったのです。それをマスコミに取り上げられたのでした。
このようなこともあって、私は生まれつき押しの強い性格だろうと思われがちなのですが、幼少期は引っ込み思案な性格でしたので、後天的に身に付けたものになります。私自身が意識してきたことは「自分を信じる」、ただそれだけです。それによって、思いがけない結果になったり、ワクワクするような体験をしたりしてきました。もしそれが「図々しい」のだとしたら、私は皆さんに「図々しくあれ」とお勧めしたいです。
本書では、私のこれまでの生き方を「図々しさ」という観点で振り返っています。すべて実体験ですが、まぁ、少しは記憶違いがあるかもしれません。なにしろ物事を自分に都合よく解釈してしまう癖があるので、はたから見れば悲惨だった出来事も、自分ではラッキーなチャンスと捉えているかもしれません。
本書は3部構成です。第1部は幼少期から大学院時代までを振り返る「図々しさの発芽編」、第2部は最初の勤め先である味の素時代をまとめた「図々しさの成熟編」です。第1部と第2部ではトピックごとに、冒頭に「図々しさの要点/リミティングビリーフ破壊のコツ」を整理し、最後に「図々しさの効用」をまとめています。
本書で紹介している「図々しさの要点/リミティングビリーフ破壊のコツ」の一部をお見せします。もし「これならできそうだ」と思ってもらえることがあれば、採り入れてみてはいかがでしょうか。
第1章
・褒められたことは真に受ける。
・面倒を見てくれる人がいれば、当たり前だと思って遠慮しない。
・アンチをスルーする。
・かなわない相手と同じ土俵には上がらない。
第2章
・先の読めない状況でも楽観的に行動してみる。
・希望があったら言うだけ言ってみる。
・勝手に相手を決め付けたり察し過ぎたりしない。
・可能性を捨てるのではなく、ものは試しに行動してみる。
第3章
・相手の学歴などに遠慮せず、目標を決めたら巻き込む。
・皆でその状況を楽しむ。
・やらないで悶々とするよりも、やってみて失敗から学ぶ。
・周囲への迷惑よりも自分の好奇心や可能性を優先する。
第4章
・前例がなければ自分が前例になる。
・貴重な環境を堪能するために周りとは異なる行動を取る。
・失敗したことでも隠さずに平気で話す。
第5章
・機械化の時代に、まずはアナログが重要だと指摘する。
・問題の原因を究明するまで時間がかかっても諦めない。
・自分の身の振り方を決める際には周りに忖度しない。
そして第3部は、サイゼリヤに転職して社長になるまでを書いた「図々しさによる飛躍編」です。私がサイゼリヤで何をしてきたのか、これまで断片的には取材などで語ってきましたが、ここまで赤裸々に書いたのは初めてのことです。
本書に書いている私の「いいかげん過ぎるやろ!」としかられてしまいそうな生き方をお読みいただければ、「なんだ、そんなんでいいんだ!」と楽しくなってくるでしょう(あるいはあきれるかもしれません)。そして、「なんだ、一歩を踏み出すというのは、簡単なことなんだな」とこれまで身構えていた自分から力みが取れるでしょう。本書によって、あなたの可能性を広げるお手伝いができるとしたら、とてもうれしいことです。
それでは、ここから、図々しく自分の可能性に素直に生きてきた男の物語を楽しんでください。この物語には、あなたの可能性がちりばめられているはずです。
株式会社サイゼリヤ 元社長 堀埜 一成
【目次】