その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はウィル・ラーソンさんの『 スタッフエンジニア マネジメントを超えるリーダーシップ 』です。

【まえがき】

 初めての著書『An Elegant Puzzle』について尋ねられると、私は10年以上をかけてその半分を書き、残りの半分を半年で書いたと答える。ときには執筆が困難を極め、最終的な仕上がりにも変更を加えたい点はあったものの、それでもその創作は私にとって人生のハイライトと呼べるものだった。本を書いたことがある者は、本を書こうと考えている人たちに考え直すよう説得するのが普通だが、私には他人に対して、そして自分に対しても、そんなことをするつもりはない。自ら、もう1冊書きたいと願ったほどだ。

 問題は、「何を書くか」だった。そのうちエンジニアリングマネジメントについてもっと書きたいと思うようになるかもしれないが、現時点ではもうすべて言い尽くした感がある。また、私は開発者としてよりもマネジャーとして過ごした時間のほうが長いため、効果的な開発法などについては、著者として適任ではない。いつかインフラ技術について本を書きたいという望みもあるが、これから数年のあいだは、インフラストラクチャについて考える時間を減らそうとも思っている。

 最後に、私は自分に問いかけてみた。今の私はどんな分野に挑戦しているのだろうか? どんな本があれば、テクノロジー業界はポジティブな方向へ進むだろうか? この2つの問いに共通する答えが「スタッフエンジニア」の役割だった。ほとんどの職業で、人は昇級するにつれて自分の役割が明らかになっていく。ところが私の印象では、エンジニアの多くはスタッフレベルの役職に就いたとたん、方向性を見失うのである。10年以上懸命に働いてようやくスタッフエンジニアになれた仲間たちが、仕事を嫌いになったり、成功する自信をなくしたりするのを見ると、本当に心が痛む。

 スタッフレベル以上の役割の仕事に関するテーマを深く掘り下げていくうちに、私は多くの人がそれぞれまったく異なった経緯を通じてそうした役職に到達したことに気づいた。私がいっしょに仕事をしたことがある最高の才能をもつ人々のなかには、シニアエンジニアレベルの役職を通過するのにとても苦労した人が少なくない。昇進に果敢に挑戦するのだが、そのたびにシステムの壁に阻まれて、次の選考時期まで持ち越しになるのである。

 本書を書きはじめたとき、最初のステップとして章やトピックの構成を考えた。そのアウトラインを眺めていたとき、この本を私だけの力で書くのは無理だと気づいた。そこで、数多くの仲間たちにインタビューを行い、彼らがどのようにしてスタッフエンジニア職に就いたのか、そして昇進後どのように活躍してきたのかを尋ねたのである。そこで得られた談話を、マネジャーとしてスタッフプラスエンジニアのサポートと昇進と雇用に携わってきた私自身の経験と組み合わせることで、本書は次第に形をなしていった。

 本書がテクノロジー分野におけるリーダーシップのあり方を見つめ直し、その新たなビジョンに向かって成長するための助けになることを願っている。

【目次】

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