その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は吉田大貴さん、吉田まみなさんの『 Power Platform 運用の教科書 』です。

【はじめに】

 本書は、Microsoft Power Platformを初めて使う方から、既にビジネスで活用している方までを対象に、Power Platformを全社的に利用するうえで欠かせないガバナンス・セキュリティ対策のポイントを体系立ててまとめたものです。組織全体で安全かつ効率的にPower Platformを導入する際の設計理念や運用体制、環境構築、セキュリティ強化、監視・通知の仕組み、AI+ローコードへの対応など、幅広いテーマをカバーしています。

 組織の規模を問わず、「便利そうだけど、セキュリティや管理が複雑で大変そう」という不安を解消し、導入後も継続的に活用できるよう、米マイクロソフトのPower Platform製品開発チームで蓄積されたベストプラクティスや運用上のヒントを盛り込みました。単に技術的な解説にとどまらず、「なぜ必要なのか」「何がビジネスにもたらされるのか」が具体的にイメージできるよう、可能な限りわかりやすく翻訳・整理しています。難しい専門用語や設定手順に振り回されることなく、「このテクノロジーと管理の仕組みを導入すると、会社の未来がどう変わるのか」が具体的にわかることが何より大切なことだと考えているためです。

 企業のリスクを抑えつつ新しいテクノロジーを導入するための方策をまとめているので、大企業・中堅企業・小規模企業といった企業の規模を問わず、部門単位ではなく企業全体として統制のとれた運用を実現しながら、スピーディーにビジネス成果へとつなげる知識を習得できます。

本書の構成

 本書は、全体を8つの章に分け、Power Platformのガバナンスと運用管理の要点を順に解説しています。新しく学ぶ方も、既に使い始めている方も、安心して導入・運用し続けるためのガイドとしてぜひ手に取ってみてください。技術書でありながらビジネス書としても読める、Power Platformガバナンスの決定版になっています。各章の内容は以下の通りです。

第1章 Power Platformのガバナンス運用設計の理念
 組織全体でPower Platformを活用する際に必要なガバナンスの基本方針を示します。ガバナンスの重要性や、Power Platform特有の管理課題を整理し、セキュリティや運用ルールのバランスを取りながらイノベーションを促進していくための基本思想を解説します。

第2章 Power Platformを全社利用するための運用体制
 Power Platformを社内でスムーズに運用するための体制作りを取り上げます。全体管理者・環境管理者・アプリ作成者・ユーザーなどの役割をどのように分担し、何を責任とするかを紹介します。ガバナンス委員会や「CoE(Center of Excellence)」を活用し、全社的な標準化とユーザー教育を支える組織全体を横断する仕組みを考察します。

第3章 環境設計とデータ損失防止ポリシー
 Power Platformを活用するために欠かせない「環境」の概念を整理しつつ、開発・検証・本番など用途に応じた環境の構成パターンや、セキュリティやデータ保護を強化するデータ損失防止(DLP)ポリシーの役割を解説し、マネージド環境についても取り上げます。組織規模や業務要件に応じて最適な環境設計を行い、セキュリティと運用負荷のバランスをとる方法を学びます。

第4章 テナントのセキュリティを向上させる
 組織レベルのセキュリティ強化に必須となる、テナントレベルでのセキュリティ対策を解説します。テナント分離や共有管理、Azure仮想ネットワークとの組み合わせなど、高度な設定方法を示します。PowerPlatformとMicrosoft 365が連携した堅牢な運用基盤を作り上げるための具体的なアプローチを示します。

第5章 テナントの活動状況を監視する
 監査ログやアクティビティログ、Power BIを活用したダッシュボードを活用し、テナント内で発生する多種多様なアクティビティを可視化する方法を紹介します。Microsoft Purviewを用いた定期監査や運用タスク管理、監視結果をガバナンス方針に反映するフィードバックループを回すことで、運用ルールの継続的な改善とリスク低減を図る流れを示します。

第6章 活動内容に対して通知・行動する
 Power AutomateやMicrosoft Sentinelと連携し、重大なイベントが発生した際にすばやく対処するためのアラート通知や自動化された対応策を解説します。ポリシー違反の検知からアプリ停止、誤停止を防ぐ仕組みなど、リスクを抑えつつ運用効率を高めるための実務で役立つポイントをまとめています。

第7章 AI+ローコードを安全に使う
 AI BuilderやCopilotなどのAI機能とローコードを組み合わせたアプリやエージェントのガバナンスを扱います。責任あるAIの概念やデータの扱い方、AIモデルの学習・推論の透明性などを考慮しながら、組織でAIを安全に取り入れるためにAI活用とガバナンスを両立させる方法を紹介します。

第8章 アプリケーション(ボット)ライフサイクルの確立
 アプリやエージェントを開発・テスト・本番リリース・運用・最終廃止に至るまで一貫して管理するライフサイクルをビジネスユーザー向けと、プロ開発者向けの2つの方法で解説します。全体的な流れと実践的な手法を学ぶことで、Power Platformで構築されたソリューションを長期的に安定運用しながら、継続的に改善していくための基盤を確立するためのヒントを示します。

 本書の狙いは、組織のガバナンスや管理ルールをしっかりと確立しつつ、Power Platformが持つ高い生産性と柔軟性を最大限に生かすことにあります。「便利だがリスクがある」「セキュアだが複雑になる」という二律背反を解消し、全社的に導入・運用を成功させるための実践知識を網羅しています。

 ぜひ本書を通じて、組織全体を巻き込み、さらに大きなビジネス成果を生み出すきっかけをつかんでいただければと思います。本書を通じて、Power Platformの導入・活用に対する理解を深め、社内外での業務効率化や新たな価値創出を実現していただければ幸いです。

2025年2月
吉田 大貴、吉田 まみな


【目次】

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