その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は福山絵里子さんの『 #生涯子供なし なぜ日本は世界一、子供を持たない人が多いのか 』です。

【はじめに】

 生涯にわたって子供を持たない人が増えている。これは多くの人が日常生活の中でうっすらと感じていることだと思う。「うちの子はずっと独身で」「最近は子供がいない人が多いから……」という会話が交わされることは珍しくない。

 その背景を詳しく尋ねる人は少ない。「子供を持つか持たないかは個人の自由」であり、「極めてプライベートな問題」である。それぞれの事情があり、他人がどうこう言う問題ではない。むしろ日本では「子供がいない」ことを話題にするのはタブーである、というのが通常の感覚だろう。

 少子化は常に国家存続の危機として問題視され、昨今ニュースでその言葉を聞かない日はない。もっと人口を増やさないと大変なことになる、と国家は脅しに近い警鐘をならしてくる。だがそこに、誰が子供を持たないのか、子供がいないことはその人々にとって幸福なのかどうかという視点は、ない。

 子供を持たない人がどのくらいいるのかを数値で見てみるとどうだろう。世界で比較してみるとどうだろう。こんな単純な問いが、日本社会で投げかけられることは、これまでほとんどなかった。

 しかし、国民の視点から社会を考える上で必要なのは、実はこのような問いかけではないだろうか。

 問いへの答えは、日本は世界でも突出した「生涯無子(むし)」の国であるということだ。先進国で最も、生涯にわたって子供を持たない人が多い国。それが今の日本だ。

 子供を持たない理由は様々で、自分の人生をより楽しみたいからという人もいる。だが、日本は世界で最も、既存の価値観にとらわれず自分の人生を謳歌している人が多い国なのだろうか。多くの読者がそうではないと感じるのではないだろうか。

 子供を持たない人の増加という問題に、記者としてどう向き合うかはとても難しい。マクロの数値から全体像をつかもうとすると、それだけでは語れない個々人の人生が思い浮かぶ。個々人の人生を追いかければ、その多様性ゆえに全体像を語ることの意味について考え込んでしまう。

 そもそも子供を持たない人の増加を「問題」として提起することが正しいかどうかという問いもある。「問題」とすれば、子供を持たないことを負と捉えるイメージが強調され、それは子供を持たない人への偏見を生じさせたり、強めてしまったりする可能性がある。

 一方で、「問題」としなければ、子供を持たない人の増加の背景にある社会的な構造を見落とす可能性がある。これまでの日本はどちらかといえば、話題にすることをタブー視してきた結果、その背景について踏み込んで考えてこなかったのではないだろうか。

 子供を持たないことは悪いことではない。社会が豊かになり、人生の選択肢が増える中で、どの先進国でも、子供を持たない人は増えてきた。

 だが、日本は突出している。それはなぜだろう。その先の未来には何があるのだろう。本書ではこのような視点から、子供を持たない人の増加について考えてみたいと思う。

 マクロのデータと個人の声の間を行き来しながら浮かんだのは、「産みたくても産めなかった日本」や「家族がいない高齢期への不安」、そして「若者の絶望や無関心」だった。

 この先、日本は、女性の3~4割、男性の4~5割程度が生涯にわたって子供を持たない国になると推計されている。そのとき、日本社会はどうなるのか。人々の生活はどう変わるのだろうか。

 本書では、個人の視点を問題の中心に据えながらも、できるだけデータや専門家の知見を交えて考察した。独身税の歴史やセックスレスなどの話題のほか、老後の身元保証といった現実的な課題についても取り上げた。なお、本文中に登場する方々の肩書きは取材当時のものとした。取材に応じてくださった方々に改めて感謝を申し上げたい。

 「少子化」を個人の視点から捉え直した、いわば「裏・少子化論」と言っても良い。子供の有無にかかわらず、現代の少子化問題に疑問を持つ方々に読んでいただければ幸いである。

【目次】

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