その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は清水功哉さんの『 マイナス金利解除でどう変わる 』。「まえがき」をお届けします。

【まえがき】

 17年ぶりの金利引き上げが決まったらしいが、なんだかよくわからない──。

 日銀が2024年3月19日にマイナス金利政策の解除をはじめとする政策の枠組み見直しを決めたという発表に接して、そう感じた読者は多いかもしれません。

 少しも恥ずかしいことではありません。

 日銀の仕事である金融政策の内容は、過去四半世紀、極めて複雑化してきたからです。手掛ける仕事の範囲も広がりました。2013年にいわゆる異次元の金融緩和政策がスタートしてから、その傾向は一段と強まり、理解が難しくなりました。

 筆者が金融政策の取材にかかわり始めた1989年当時とは大違いです。細かい動きをいちいちフォローし、深く理解することは、忙しいビジネスパーソン、生活者、学生らには必ずしも必要ないとすらいえるほどです。

 ただし、金融政策には定期的に「節目」と呼ぶべき大きな変化を見せる局面が訪れます。その際には政策の変化の内容や意味を頭に入れておく必要があります。

 8年前に『緊急解説 マイナス金利』、2023年に『植田日銀 こう動く・こう変わる』を、本書と同じ日経プレミアシリーズから出したのも、そうした問題意識によるものでした。

 今回決まった政策の見直しも「節目」です。本書はそれを、図表なども活用しながら、できるだけポイントを絞って、わかりやすく解説したものです。

 筆者は35年前にジャーナリストとして金融政策の取材に関与し始め、その変化を見続けてきました。同時に、約15年前にファイナンシャルプランナー(CFP)や証券アナリスト(日本証券アナリスト協会認定アナリスト=CMA)の資格を取得。金融政策の変化が家計や個人の資産運用にとって持つ意味についても記事を書いてきました。

 本書も、ジャーナリスト、ファイナンシャルプランナー、証券アナリストの3つの視点を踏まえて書いています。

 構成は以下の通りです。関心を持ったテーマの章があれば、順番にこだわらずに先に読んでください。

 序章では、マイナス金利解除など政策見直しの決定がなぜ3月に下されたかを解説しました。市場関係者には4月説も根強くあったなか、なぜ3月だったのかという話です。

 第1章では、今回の政策見直しの内容を解説するとともに、過去25年間の金融政策の変遷を振り返りました。

 第2章では、日銀が今後、追加的な利上げを決める際にどんな点に着目するのか、追加利上げはいつなのか、その後、どの程度金利を引き上げるかのシナリオを考えました。

 第3章では、以上のシナリオを踏まえ、多くの読者の関心事項と考えられる住宅ローンへの対応を中心に、家計が取るべき対応について書いています。

 第4章では、日銀が上場投資信託(ETF)買い入れによる株価の下支えから手を引き、逆に株の売りに専念することの意味を考えました。

 第5章は、日銀が政策の見直しを決めた背景となったデフレからインフレへの転換はなぜ起きたのか、それは何を意味しているのか、私たちはどんな発想転換が必要なのかといった点を考えています。

 本書が、マイナス金利解除をはじめとする金融政策の枠組み見直しに関心を持つビジネスパーソンや一般の生活者、学生らの皆様の参考になれば幸いです。

2024年4月
清水 功哉


【目次】

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