その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はウィル・ラーソン(著)、岩瀬義昌(訳)の『 エレガントパズル エンジニアのマネジメントという難問にあなたはどう立ち向かうのか 』。第1章「導入:重要なパズルを解くために」をお届けします。
【第1章 導入:重要なパズルを解くために】
誰かの役に立ちたいという思いからマネジメントに進む人がいる。昇給と昇格が続くことを期待して、現在の刺激的な役割と引き換えにマネジャーになる人もいる。自分の上司にすっかりうんざりし、自分ならもっとうまくできると確信して、マネジメントに進み始める人すらいる。
これらのうち、どれが私自身を表しているかは言わないでおこう。
マネジメントに至る動機がなんであれ、やっかいな職種に就いてしまった、と感じるかもしれない。熟練した実践者は不足しており、マネジャーの育成に前向きなのは優秀な企業のみだ。
育成プログラムが少ないことを踏まえれば、現代のマネジャーの準備不足を心配する声があがるのも無理はない。私の場合、キャリアの初期に同僚が「これまで働いたなかであなたが最高のリーダーです」と伝えてくれたのは幸運だった。その後、「あなたは最悪のリーダーです」と別の同僚が伝えてくれるまでにはもう数年必要だったが。
ダビデのマントがシリコンバレーの巨人の肩から垂れ下がりつつある一方で、テクノロジー企業の大半は成功するビジネスをいつか生み出そうと願う善意のさなぎである。そのさなぎは、予期せぬ教訓をひとつずつ学びながらリードする方法を身につけつつあるマネジャーによって導かれている。そのようなマネジャーの多くは、大変な状況のなかでエンジニアリングマネジメントに取り組んでおり、そこでの成長は苦難の連続だ。
これがまさに私の経験だった。私にとってマネジメントへの道は、2010年に降りかかった2 回のレイオフによりDiggで始まった。それまでに前職で実施した3度の1on1からは驚くべきことに、しっかりとしたマネジメントのフレームワーク[枠組み]は生まれなかった。当時は、自分が何をしているのかも全く分かっていなかったのだ。
その後、私は、マネジメントに関連しそうなものは何でも読んで、独学を進めてきた。すばらしい学習教材はたくさんある(その多くは巻末の「とても役に立った書籍」にリストアップしている)が、私が見つけた貴重な答えでさえも、常に増え続ける疑問の大海原に埋もれ続けていった。
エンジニアチームが200人から2,000人に2年で成長していたUber、そして同様の急成長を経験していたStripeで働いたとき、際限のない多様な挑戦を通じて初めて、マネジメントのあり方を本当に磨く機会があった。急成長する企業でのマネジメントは穏やかではないが、学習と成長にいちばん適した機会となる。
さらに経験を積むにつれて、マネジメント、特にエンジニアリングマネジメントへの理解が進み、この分野を「一連の優雅でやりがいのある、重要なパズル(解決すべき問題とその解法)」として捉えるようになった。そして、私が格闘し学んできたパズルをまとめたのが本書である。
本書の構成
本章の「導入」に続き、私が見いだした手法のなかでもっとも重要な「組織」を第2章で紹介する。組織デザインは正しい人を正しい場所に配置し、彼らに決定権を与え、結果に責任を持たせる。組織を一貫性を持って運営して慎重に発展できるのであれば、組織デザイン以上に役立つものはない。
続く第3章では、多種多様な場面で役立つマネジメントの基本的な「ツール」をいくつか紹介する。システム思考からビジョン[目標、将来像]のドキュメント化まで、メトリクス[基準に基づいて指標化した数値]からマイグレーションまで、組織再編からキャリアナラティブ[物語としての経歴]まで、といったようにツールを使った手法は多岐にわたる。この章は、紹介しているアイデアにざっと目を通し、必要なときにじっくり読み直すのがもっとも簡単な使い方だろう。
第4章の「アプローチ」では、自分のマネジメント方法の調整が必要な状況について説明する。急成長する会社にマネジメントを適応させる方法と、自分の権限を超えて影響を与えたい場合のマネジメントを掘り下げる。この章は、思ったようにうまくいかない領域へ取り組むための手法の発見に役立つだろう。
続く第5章では「文化」を探求していく。インクルーシブなチームあるいは組織を育むための実用的な手法に焦点を当てる。また、「自由へ」と「自由から」の対立に関する文化的な話題と、ヒーロー文化への対応策を掘り下げる。
最後の第6章では面接、採用、業績管理に着目して「キャリア」を探求していく。採用は採用担当が実施するもの、業績管理は人事担当が設計するものと考えるマネジャーが多いが、これらはマネジャー自身が頻繁に利用すべき強力な手段となる。
本書を読み終えたとしても、翌日から「完璧なマネジャー」としてオフィスに出勤できるわけではない(著者自身は、ほどほどに有能なマネジャーであると自認しながらオフィスに出勤できることに感謝している)。それでも、本書によってあなたがマネジメントにおけるさまざまな課題に気づき、試行錯誤するための新しいアプローチを知ることで、エンジニアリングマネジメントへの道を数歩でも進められれば幸いである。
【目次】






