その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は毛内拡さんの『 最新研究でわかった! くじけない脳のつくり方(日経ビジネス人文庫) 』です。
【はじめに】
脳の驚異的な働きと奥深い可能性!
本書は、「脳科学」の最新研究から脳のレジリエンス(再生力)と柔軟性、すなわ ち「くじけない脳」を1つのテーマとして考察していきます。
私が考える「くじけない」とは、無敵を求めることではありません。
どんなに心が折れそうなときでも、その奥にある希望や力を見出し、前に進み続けるためのヒントを探る。それが「くじけない」ことです。
常に前向きな思考で未来を切り拓く「くじけない脳」の特性、さらに日々の生活や学びの中で「くじけない脳」を“鍛える”ためのヒントも紹介していきます。
皆さんは「脳科学」にどんなイメージをお持ちでしょうか。「難しそうな研究」「自分は文系だから縁遠いもの」と感じる方が多いかもしれません。
でも、考えてみてください。脳は私たち全員が必ず1つ持っている「臓器」です。
そして、政治も経済も、文学もアートも、すべては脳が生み出しているものなのです。むしろ、こうした分野に興味をお持ちの方にこそ、脳科学の面白さに気づいていただきたい……こうした思いから、本書を執筆しました。「脳科学は現代人の必修科目である」と私は考えています。
さて、「脳は臓器」という言葉に驚かれた方もいるでしょう。本書は、「思考の器官」と捉えられがちな脳という存在を、生命活動全体を支える「臓器」として再評価する試みです。私たちの日常生活は、感情や行動、健康までも左右する脳の働きによって支えられており、その不思議なメカニズムは日々新たな発見を生んでいます。
序章では、まず脳とはどんなものであるか、簡単にその働きを説明します。
第1章では、流行のいわゆる脳トレゲームが実は認知機能向上の効果に乏しいという最新研究の成果を引きつつ、腸内環境や記憶の仕組み、直感と自己評価の関係など、脳の働きを取り巻く驚きの事実を紹介。しなやかでくじけない脳の条件を考えつつ、身体全体との連動が健全な脳機能の維持に不可欠であることを明らかにしていきます。
第2章では、脳が「引き算思考」を苦手とするなどの意外な特性や、心拍と連動した情動、さらには偏見や差別といった「脳のクセ」について解説します。脳が単なる情報処理装置ではなく、複雑な社会性や感情を司る臓器であることがおわかりいただけるでしょう。
第3章は、若々しく元気な「生涯現役脳」の秘密に迫ります。適切な生活習慣や環境が、日々のパフォーマンスだけでなく健康寿命にも大きく影響するという科学的根拠をもとに、脳の長寿と活力を支える要素を整理します。
第4章では、人がネガティブに考えてしまう理由、うつ状態の生物学的背景やストレスの影響について考え、心の健康と脳の状態が密接に結びつくことを解説します。
第5章では、子どもの脳の成長と発達に着目し、遺伝や環境、親の行動がどのように影響を及ぼすのかを明らかにし、子育ての指針にもなる最新の知見を提供します。
そして、第6章では、究極の「くじけない生き方」をテーマに、脳の再生技術や新たな医療アプローチ、ライフスタイルの変革について探究しています。
各章の合間にはコラム「AIと人間の脳」を入れました。AIの話題の中でも人間の脳の可能性について考えさせられる話をピックアップしたものです。
このように、本書は脳を単なる抽象的な「思考の中心」ではなく、生命活動を支える「臓器」として捉え直すことで、日常生活におけるその重要性と欠かせなさを、多角的かつ最新の研究成果に基づいて解説しています。
読者の皆さんには、脳の驚異的な働きとその奥深い可能性を実感していただけることでしょう。
脳科学は目まぐるしい発展の中で新たな真実を次々と明らかにしてきました。世界各国の研究者が、小さな積み重ねから大きな発見へと導くその過程は、人類の知的探究の証です。私自身も、国内外での講演や執筆活動を通じ、脳の可能性や未知の領域に挑む日々の中で、地道な努力の先にひそむひらめきの瞬間に魅了され続けています。
本書は、2022年に刊行した書籍『すべては脳で実現している。』(総合法令出版)を文庫化したものです。
文庫化にあたっては、「くじけない脳」を全編を貫くテーマとして、原書に掲載された豊富な実例や最新の研究成果をより読みやすく、実生活に即した形で再構築することに努めました。「くじけない脳」の精神は、人間関係やストレス、老化などにめげそうになることが多い日々の中で、大きな指針となると信じています。
脳という不思議な臓器は、私たちの日常に無数の驚きと発見をもたらします。一度その神秘に触れると、些細な疑問や課題が次第に大きな可能性へと変わり、時には予期せぬ失敗や戸惑いも、新たな挑戦への糧となって未来を照らす光となるでしょう。
未知への探求は決して平坦な道ではありませんが、その先に待つ発見こそが、私たちに希望と活力を与えてくれるのです。
この書籍が、読者の皆さんに脳の奥深さと、それに挑む研究者たちの情熱を伝え、日常に新たな視点や気づきをもたらす一助となれば幸いです。
さあ、共にくじけず、未来への扉を開いていきましょう。
2025年5月
毛内 拡
【目次】




