その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は菅野寛さんの 『経営の失敗学(新装版)』(日経ビジネス人文庫) です。
【はじめに】
私は、経営コンサルタントとして、その後は経営学の教授として、合計二十数年間、様々な企業の様々なビジネスのお手伝いをしてきました。その過程で多くのビジネスの成功・失敗をインサイダーとして間近に観察する機会に恵まれました。その観察から気がついたことがあります。
- 成功は十社十色で、一つひとつの成功はユニーク(独自)である。したがって、成功をパターン化はできないし、他社の成功をモノマネしても成功しない
- 一方、陥りがちな共通の失敗は多く、ある程度パターン化できる
そうだとすると、成功から学ぶことも重要ですが、失敗から学ぶことにも意味があるのではないか、と思うようになったのです。世の中では成功例の方が華やかで人気がありますが、同じくらい、あるいはそれ以上に失敗から学ぶことが重要なのではないでしょうか。
この本はそのような発想から執筆したものです。一つひとつの成功がユニーク(独自)でパターン化できないということは、「こうすれば必ず成功する」という「必勝法」はない、ということです。仮にある企業のあるビジネスが成功したとしても、それはある特殊なコンテクスト(その企業独自の、その時期独自の外部及び内部環境)の下での成功であり、他企業が異なるコンテクストの下でモノマネしてもまず、成功しません。
ところが、「これをやってしまえばほぼ間違いなく失敗する、したがってこれをやってはいけない」という「DON’Ts」は存在します。あるいは踏んではいけない「地雷」と呼んでもよいでしょう。多くの場合、この地雷は驚くほど共通で、しかも驚くほど当たり前のことです。ところが、あまりにも多くの企業がこのわかりきった地雷を踏んで自滅しているのです。
ならば、どこにどのような地雷があるかを明確に意識して、丁寧に地雷を避けてビジネスを行えば、少なくとも「失敗しないビジネス」、あるいは「成功確率を上げるビジネス」はできるのではないでしょうか。
この本を執筆したのは、様々なビジネスに関わる読者のみなさんに、ぜひとも成功して欲しいと心から願っているからです。経営アドバイザーとしての私の役割は、経営者にこの地雷の所在に気づいていただき、地雷回避を実行していただくことでした。また、斬新な戦略も、地道に地雷を回避し、当たり前のことをきっちり行う先に見えてくるものです。
この本に書かれていることの多くは、ビジネスにおいて極めて当たり前の「やるべきこと、やってはいけないこと」です。ところが、現実のビジネスにおいては、この当たり前のことができずに失敗するビジネスがあまりにも多いのです。その意味で、この本は実践・実利を意識しています。真剣にビジネスを成功させたいと日々切磋琢磨している方に向けて執筆したものです。
「なんだ、当たり前のことじゃないか。知っているよ」とそこで思考停止するのではなく、「この当たり前のことが自分は本当にやりきれているだろうか。もしやりきれていないとすれば、それはなぜだろうか。やりきるためには、自分は何を変えなければいけないのだろうか」と自分のことに置き変えて、問題意識をもって読み進んでいただければ幸いです。
【目次】









