その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はセシリー・ウォン、ディラン・スラス(編著)の『 地球グルメ大図鑑 世界のあらゆる場所で食べる美味・珍味 』です。
【はじめに】
食べることは、最も没入感があり直感的な体験かもしれない。言うなれば、五感を総動員する旅である。路地裏のキッチンから響く食器の音に耳をすまし、熱した油で炒めるニンニクの香りに誘われ、テーブルに差し出されたひと皿の料理を見て、フォークを握りしめたら、いざ味わう。世界中の人々は、生きる手段であり楽しみである「食」によってつながっている。ある土地の心に触れたければ、その郷土料理を食べてみるのが一番の近道だ。
ウェブコミュニティー「アトラス・オブスキュラ」の合い言葉は、驚きは至るところで見つかるというものだ。遠い未知の地を訪れなくても、通りを歩き、階段を下るだけで、発見があるはずだ。例えば、ロンドンの地下にある喫茶店が実はビクトリア朝時代の公衆トイレだったりする。驚きを探求する人々にとって最善の手段は旅に出ることだが、本書を読めば、冒険は必ずしも航空券を必要としないことがわかるだろう。自宅の居間で営業しながら米国料理界のアカデミー賞に輝いたアーカンソー州のバーベキュー店、カリフォルニア州の駐車場に並ぶタイ料理の屋台、夜な夜なタコス屋に変身するメキシコの自動車修理工場など、世界は食の驚きに満ちている。
本書は、摩訶不思議な世界の食文化を広く浅く紹介する一冊だ。私たちはおいしいものを愛してやまないが、大食漢というよりは探検家、美食家よりは探求者でありたいと思っている。本書には、味わう価値のあるメニューにとどまらず、忘れられた歴史や、消滅の危機にある伝統、あまり知られていない習慣、創意工夫をこらした調理法、そして世界の珍味が盛り込まれている。7つの大陸、120を超える国々や地域にまたがる騒々しくもかぐわしく、アクション満載の饗宴だ。実際にその料理を体験できる場所や方法についても可能な限り紹介している。
本書が掲載する情報のほとんどは、アトラス・オブスキュラのコミュニティー(50万人以上の素晴らしいユーザーが日々情報を共有している)の投稿と、数多(あまた)の不思議を求めて地球を駆け回る卓越した編集者チームから提供されたものだ。あなたが手にしている一冊は、奇妙なレストランや魅惑的なフルーツ、カナダの北極圏にあるホッケー場を地元の人々が温室に変えて大繁盛したエピソードなどを私たちに教えてくれた、すべての人々による壮大な合作なのである。
驚きは、その気になればどこでも見つかる。私たちはいつもそう信じてきた。それは今、あなたの目の前にあり、食べてもらうのを待っている。遠慮なく召し上がれ。
セシリー・ウォン、ディラン・スラス
【目次】
