その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日はブライアン・インズ、クリス・マクナブ(著)、定木大介、竹花秀春、梅田智世(訳)の『 ビジュアル 世界の偽物大全 フェイク・詐欺・捏造の全記録 』です。

【はじめに】

 「人を欺くことに手を染めるとき、我々は何と複雑にもつれ合った布目を織らなければならないことか」──これはウォルター・スコット卿の物語詩『マーミオン』の一節だが、本書ではその「布目」をつぶさに改めていく。騙しには「模造・模倣」「偽造」「詐欺」という3つの形態があり、この3形態はまた、犯罪に至るまでの3段階でもある。

 「模造・模倣(FAKES)」とは、「すでに存在する」か、または「かつて存在したことが記録にとどめられている」ものの複製を作る行為をいう。紙幣、手紙、原稿、本といった、およそありとあらゆる種類の紙媒体がその対象になりうるし、芸術作品も例外ではない。また、素性を偽ったり、他人になりすましたりすることも、この範疇に属するだろう。

 これに対して「偽造(SCAMS)」は、複製に本物の作者の名前を添えるなどして、あたかも本物であるかのように見せかけることだ。文書や芸術作品に偽の署名を書き加えたり、本物の作者の手になるものだと認めさせるような補強証拠を用意したりする行為がそれにあたる。一般論だが、まだこの段階ではいかなる犯罪も成立していない。ゴッホやマティスの絵を模写するアマチュア画家は多いし、面白半分に巨匠のサインまで入れてしまう向きも少なくないが、それをもってただちに犯罪と呼ぶのは無理がある。

 しかし、単に偽物を作るだけでは飽き足らず、何らかの方法で売りに出したり、ほかの方法で金銭を得る目的に供したりすれば、それは「詐欺(FORGERIES)」と呼ばれるれっきとした犯罪行為となる。

 法的には、たとえば通貨の複製を作った者は、たとえそれを流通させようとしなくても、模造──より正確には偽造──の罪に問われる。また、犯意をもって他人の名を騙ったり、自分を本来の自分と違う何者かに見せかけようとしたりすれば、それは単なる模造・模倣の域を脱し、詐欺行為を働く一歩手前にあると言える。

 本書で見ていくように、およそどんなものでも、一度は模造・模倣または偽造されたことがある。それは何も、有名な芸術作品や、紙幣などの金券、遺言状、身分証明書、家具、宝石、陶器に限らない。節操のない偽造者たちは持てる技術と集中力のすべてを注ぎ込んで、たとえばウイスキーの瓶の偽物を生み出してきたし、それこそデザイナージーンズから豆の缶詰まで、ありとあらゆる種類の商品を偽造してきたのである。


【目次】

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